トラウトバム日本語版        

DIARY

12月1日

一昨日、トンガリロの上流ポイントに入ってみた。一日中曇りで、しかも肌寒い天気だったせいか、ハッチはまったくなし。これまでのパターンでは、8時過ぎから小さな甲虫(1から2ミリ)が無数に上流を目指して飛び、その後、8時半過ぎからカディスのハッチ、そしてライズと雪崩れ込んでいたのに、甲虫もハッチもライズもまったくなし。8時45分まで待って何もないので、一つ下のポイントに歩いて移動したけれど、ここでも何もなし。場所が悪かったのか、それとも日が悪かったのか。
今日は週末だし、天気も雨が降っているので、釣りはお預け。

この週末に畑をやろうかと思ったが、雨がひどいので、それもならない。もうあと一日、二日やれば完成するはずなのに。

兄より送られてきた「往還する視線 14-17世紀ヨーロッパ絵画における視線の現象学」近代文芸社を読み始める。薄い本なので簡単に読めるだろうと高を括って手に取ってみたのはいいものの、数ページでダウン気味。だいたい、使ってる言葉が難しいのよね。例えば、超越論的、超越論化という単語がよく出てくるのだけれど、この「超越論」ってぇやつが何ものかわかっていない。だから、当然文章の意味もいまひとつ掴みきれない。というわけで、哲学辞典をひきながら読むこととあいなった。まぁ、たまには、こういう堅い本もよいか。

12月6日

ここのところずっと天気が悪く、なかなか思ったように釣りにも行けず、畑の拡張工事も捗らなかったのだが、なんとか畑は9割がた完成に近づいた。植え替えもあとはハーブを残すのみ。おかげで、この夏はいろいろな野菜を楽しめそうだ。

仕事がない。弟は、「すべての忘年会に出席できるほど暇だ」と言っていたが、僕も同様。もっとも、僕の場合は、先立つものがないので出席したくとも行けないけれど。なんとか、新しい仕事を見つけてこなければ。

時折、忘れたころに、カディスが水槽からハッチしている。ただ、何種類も入っているので、どれの成虫なのかは、まったくわからず。
夕方、タウランガ・タウポ川に水を酌みに行く。微小水棲昆虫、植物片、苔などを含んだ新鮮な水を数日ごとに水槽の水と入れ替えているのだ。これで、少しでも餌が回り、水棲昆虫が生き残ってくれればという願い。が、川がいつもより60センチほど増水しており、水を酌める浅場でがさごそやっても、ほとんど生物は何も取れなかった。普段水が流れていないところだから仕方あるまい。今晩は前線が通過して雨になると言っているので、明日も釣りはお預けかも。

12月8日

昨日の朝、まるで集中豪雨かと思わせるほどの雨がごく短期間にまとまって降った。おかげで午後には家からツランギまでの間の川が氾濫して、国道は一時閉鎖に。釣りどころではない。それがやっと引き始めたと思ったら、今日も激しい雨。川の水量もこれでまた増えてしまうだろう。
仕方がないので、ネットで暇つぶし。
こんなん、ありました。

12月18日

いや、それにしても仕事がなくて、暇だこと。それならそれで釣りにいければよいのに、天気が悪くて川の状態もいまひとつ。しかし、ここまで仕事がないと、多少不安になってくるな。いや、多少じゃねぇよ。スッゲエ不安だよ。今月、仕事をしたのは、2日間だけだもんな。一体どうなってしまうことやら。

ま、そういう瑣末なことは置いといて。

畑の拡張はほぼ終わり、あとは砂利をひくだけとなったのだが、これがなかなかはかどらない。本当なら昨日終わっているはずだった。が、砂利を買いに行ったら、砂利を積むためのトレーラーがないという。仕方がないので、今日の朝にトレーラーの予約をして再び出かけると、「店のボスが勝手に持っていって、まだ帰ってこない、今日の夜にはきっと」だとさ。あははは。いいねぇ。そんないい加減なことで商売になるんだからさ。ふざけんじゃねぇよ。もう、てめえのところからは買わねぇ、と威勢よく啖呵を切ろうにも、他に砂利を売っている店があたりにないので、それもならない。というわけで、畑の完成は木曜日となった。大丈夫だろうな、今度は。

夕マズメ用のカディスをいくつか巻いたのだが、天候が優れず、まだ試していない。早く天気が良くならないかな。

12月20日

昨日は、ハミルトンのワイカト大学まで行き、図書館で調べもの。院で勉強されている伊藤さんにすっかりお世話になってしまう。コピーをとろうと思っていた本を貸していただいたばかりか、僕が必要としていた関係分野の本がどの辺にあるか、事細かに教えていただいた。おかげで、予定では、本を二冊コピーとるだけのつもりだったのが、1967年から現代に至るまでのNZ水産関係の学術論文集にざっと目を通すことができた。大収穫。ありがとうございます。
その間、女房はハミルトンの街でクリスマスショッピング。駄犬は車の中で昼寝。

今日、砂利を敷き終わって、ついに畑拡張工事が終了。これまで庭の隅で草ぼうぼうの中に野菜などが植わっていたのだが、ベジ・ガーデンの趣がちょっと出て、眼で見ても楽しめるものとなった。あとは舌と胃袋で楽しむのみ。

12月21日

すいません、愚痴らせてください。
昨日まで、本当に仕事がなくて、暇だったんです。それが、昨夜電話があって、急にテレビ関係の仕事がほぼ9割方の確率で入ることに。とっても急ぎで、しかもかなりのリサーチをしないとならない仕事だ。というわけで、それにとりかからなければならず、本当は今日の午後はトンガリロ川にカヤックに行く約束を友達としていたのに、反故にしてしまった。ごめんなさい。もし、この仕事がうまくいくと、1月20日くらいまでかなり忙しくなる。ああ、そんなことと分かっていたら、暇だったうちに遊んでおくのだったと悔やんでも後の祭り。けれど、自由業をやっている人だったら分かって貰えると思うけれど、仕事がまったくなく、しかも入ってくる予定もあても何もないというのは、非常に憂鬱で、とても呑気に遊んでいる場合などではないのだ。次の仕事を呼び込むべく、あれこれ頭を悩ませないとならないし、そうでもしていないと、心の平衡が保てない。
まぁ、仕事があるだけいいじゃないの。午後のカヤックはダメでも、夕マズメに行けばいいさ、いや是が非でも行くぞと燃えていたら、さっきまで晴れていたのに、一天にわかにかき曇って大粒の雨がばらばらと落ち、雷までなる始末。うわぁん。そんないじわるしちゃ、いやだぁ!

テレビ番組の下調べをしつつ思ったこと。
いま、NZの釣り場管理の記事を雑誌に書くためにいろいろと調べている。先日ワイカト大学まで行ったのもその一環。この調査にかかる費用、調査した時間、記事用写真撮影のフィルム代、現像料などは、すべて自分持ちである。支払われるのは、あくまでも原稿として書き上げたものに対してのみ。かかった費用と時間を考えると完全な僕の持ち出しであり、この記事は仕事ではなく、ボランティア、趣味の世界のものでしかない。かたや、テレビ番組は下調べ段階でももちろんお金が支払われ、今回はリサーチ料金だけでも、雑誌記事原稿料の倍近くなってしまう。ほんと、テレビって、どうしてそんなにお金があるんだろう?

12月22日

危惧した雨も短時間で止んだので、昨日は夕マズメに行ってきた。崖下のポイント。早く着きすぎたし、川面を見ていてもハッチもライズもないので、下流の方まで散歩がてら歩いてみた。流れがブッシュにぶつかるところで、かなりたくさんのカゲロウが飛んでいる。どうやら前日に羽化したものらしい。風が吹くたびにブッシュの方に飛ばされるが、ちょっとでも風の勢いが弱まると、何十という群れになって流れの上を飛び回る。大きさは#12ぐらいだから、きっとコロビュリスカスだろうと思いつつ帽子で捕まえてみたら、これが大外れ。見たこともないカゲロウだった。デジカメを持っておらず、仕方なく特徴をよく覚えておいてあとで調べることにして、釣り場に戻った。今、あれこれ本をあたってみたのだけれど、どこにもそれらしいのがない。ううむ、一体あれはなんだったのだろう?
暗くなる寸前にカディスのハッチが始まり、水面をちょこまかと歩き始める。しかし、ライズの数が少ない。先月、大雨の前はあちらこちらでボシャリ、ドボリとやっていたのに、見る影もない。まぁまぁのサイズを1尾と、40センチに満たない可愛い鱒を3尾釣って引き上げた。今度は、場所を変えてやってみよう。
毎年のことで十分承知しているのだが、トンガリロの鱒は大雨が降って川が濁るようだと、湖まで降りてしまう。そして、湖にはスメルトというおいしい小魚がゴチャマンといるので、そのまま湖から戻ってこない。おかげで、増水からしばらくはいい釣りを楽しめない。

久し振りにジョギング・カヤックをする。なかなか緊張して、おもしろかった。

12月27日

「9割以上は入ると思います」 そう知り合いからいわれて引き受けたテレビの仕事だったけれど、昨日の夜に電話があり、あっさりと流れてしまった。もし、これが入っていたら、僕と女房と犬と猫が3ヵ月はのほほんと暮らせるだけの収入があったはずなのだが、来ないものは仕方がない。で、仕事がポシャったことでかなり参っているかといえば、じつは内心ほっと安心している。すごく気が重くなるタイプの仕事だったのだ。流れてしまったおかげで、経済的にはきつい正月となってしまったけれど、健やかな気持ちで新年を迎えられそうだ。自分のやりたいこと、進みたい方向を再確認できたという意味では、貴重な体験であった。

黒木さんが妹さんと遊びに来る。で、ワインテイスティングと称して、3本ほど皆で空けた。でき上がったベジ・ガーデンを見て、黒木さんは驚いておった。わははは。どうだ、すごいだろう。

また天気が悪く薄ら寒い。霧雨が時折降っている。これでは、夕マズメもあまり期待できそうにない。

12月29日

一昨日の午後、突然仕事が入り、昨日今日はそれで追われる。翻訳の仕事なのだけれど、ほとんど文章がなく単語ばかりが続く。しかもイギリス空軍の書類なので、訳の分からんものばかり。単語数にすれば微々たるものなのに、全単語をひとつひとつ、辞書、辞典、インターネットで調べなければならないのでやたらに時間がかかった。でも、面白い仕事でもあった。

仕事がやっと落ち着いたので、さっき夕マズメの時間にタウランガ・タウポ川に出かけた。竿の代わりにネットとタッパーを持っての水棲昆虫漁り。しかし、この間の大雨の影響で、いつも行く場所に着くまでに道が数カ所落ちている。流れも多少変わっていた。浅い流れに立ち込んでごそごそとやるのだが、ほとんど何もいない。石の大きさが拳より小さく、それで大水の度にごろごろと転がるから、水棲昆虫にしてみれば非常に住みにくい環境なのだろう。大水の前には、コロビュリスカス、デリアティディウム、ストーンフライ、カディスなどが簡単に捕まえられたのに、どこを探ってもゴミばかり。当然ハッチもなく、ライズもなし。
明日は、根岸さん達がくるので、トンガリロ川の夕マズメに行ってみよう。あそこなら石が大きく、無量無数のコロビュリスカス、カディスがいるだろうから。

クリスマスプレゼントとしてパスタマシンを貰ったので、うれしくなってこのところ麺ばかり作っている。まず、ソバに挑戦してみたところ、蕎麦粉7、つなぎ3でやったら、茹でている間にぶちぶちと切れてしまい、ソバを食べるというよりソバ味のお茶漬けをかき込んでいるようであった。
昨日の夜は、スパゲッティを作る。デュラムセモリナ100%で本格を狙ったものの、なぜかコシが出ない。麺の真ん中のプリッとした歯ごたえ、アルデンテがいまひとつのだ。研究の余地がまだまだありそうだ。
そして、今日は一昨日作っておいた中華麺をいただいた。二晩寝かせただけあって、まぁまぁ腰もアリ、悪くないできだった。ちなみにスープは豚骨と鳥ガラ、それに煮干しからとった。タレは醤油、中国醤油、そして魚醤を少々と天塩で作った。具は、畑でとれた青野菜、トウモロコシに、これまた家で作ったハム。もっと経験値を積んで、さらに美味いラーメンを作れるようにしよう。

12月31日

夕べは、根岸さん達と夕マズメに行った。11月半ばにとてもよい思いをしたポイントに入ったのだが、着いてみたら、流れが変わっている。以前は腰くらいあったのが膝ちょっと上までしかない。時間的に他のポイントに移動するのは無理だったので、そこでやってみた。結果は、3人で2尾ずつ釣れたものの、あまりサイズがよくなかった。50センチクラスは、僕が対岸を狙って釣った1尾だけ。あとは、40センチとか30センチクラス。ポイントが潰れてしまったのは、12月頭の大水が原因だろう。また、どこか別のポイントを探さなければならない。
とっても残念ではあるけれど、そこがまだいいポイントで魚もたくさんいた間に、よい釣りを楽しめたことを喜ぶとしよう。一期一会。楽しめるうちに楽しんでおかないと、一寸先は闇夜でございます。命短し、恋せよ乙女、とも言いますし。

それでは、皆様、よいお年を。