トラウトバム日本語版        

DIARY

10月16日

クック諸島アイツタキ島でのボーンフィッシュから帰ってきた。悔いの残る釣りであった。
まず、アイツタキには保護区があり、ほとんどのボーンフィッシュはその中にいる。保護区の中でガイドをすることが許されているのは、ただ一人だけ。残念なことに彼は予約が一杯で、一日だけしか保護区の中で釣りをすることはできなかった。あとの4日は、他のガイドに連れられ保護区の隣に行き、はみ出たように泳いでいるボーンフィッシュを狙うよりなかった。
保護区の中にしかボーンフィッシュがいないのは、クリスマス島やバハマ、フロリダと違って、アイツタキでは地元の人間が網で捕ってむしゃむしゃ食べるからである。以前なにかで読んだ記述では、ボーンフィッシュはその名の通り骨だらけで美味しくない、そのため地元民には見向きもされず、おかげで釣りの対象として残っているということだったのだけれど、アイツタキにはこれが当てはまらない。話をした地元の人誰もが、「あれは美味しい魚だ」「私の一番の大好物」「釣れたら、持って帰っておいで」と口々に言うのだから。10月、11月は産卵の季節で、波に乗ってリーフを越えて入ってくる。それを一網打尽にするものだから、多いときは700尾、800尾と捕れる。しばらく前まで、シーズン最初の漁獲は各家庭に3尾ずつタダで配り、それ以降は市場で買うことになっていたとか。これでは、保護区の外にはいないはずである。
で、さて、実際の釣りだ。
僕が巻いて持っていったクレージーチャーリー蛇足版は6番で、ちょっと大きすぎた。それで、現地で爪切りを使い、身繕いをして8番サイズにした。色はピンクと白が良かったようだ。ようだ、とまるで人事のようにしか書けないのは、フックアップしたのはわずか3尾だけだからである。姿を見つけ、狙うことができたのは、多分20〜30尾くらいだろうか。そんなわけで、たまたま魚をかけたフライがピンクと白、という可能性もある。
では、かけた魚はどうなったのか。
1尾目 かけた瞬間に走り出し、あれよあれよという間に、140メートルほど走られてしまった。魚が走れば走るほどリールに巻かれている糸の残りもどんどん減るので、ちょうど自転車の変速ギヤを入れ替えたように、ドラッグの効きもそれにつれてきつくなっていく。緩められるだけ緩めたのにそれでも間に合わず、ウインドノットから切れてしまった。
2尾目 かけた瞬間に走り出しのだが、1尾目をかけたあとにドラッグをもとに戻しておくのを忘れていたため、今度は糸が出過ぎてバックラッシュを起こす。緩んだ糸にラインが食い込んで回らなくなり、それで糸切れ。
3尾目 かけた瞬間に走り出し、あれよあれよという間に、150メートルほど走られてしまった。ドラッグを緩められるだけ緩めたものの間に合わず、魚の口が切れたのか、ばれてしまった。
というわけで、リールのドラッグを根本的に調整し直すか、糸巻き径の大きいラージアーバーのリールを買うしかないようだ。
ちなみに、魚の大きさは6〜7ポンドが平均。4キロ、5キロの魚も珍しくないとのこと。逃がした魚じゃないけれど、僕がかけたやつもいい大きさしてたもんなぁ。
というわけで悔いが山のように残っているのであった。くそぉ。

今度出す本、「極楽ニュージーランドの暮らし方」のコピーを考えていて、浮かんだ文句。
冥土の土産に、極楽に行け!
世界で一番極楽です(当社比)
皇太子も絶賛の面白さ(嘘)

ダメだぁ。

 

 

10月17日

アイツタキの反省、続き。
使用したリールには8番のフローティングライン、120メートルのダクロンバッキング、そしてその下に300メートルのダイニーマを巻いていた。ダクロンバッキングを全部出された段階で、フライラインと合わせて150メートルになる。だから10メートル先で魚をかけたとしたら、魚が走った距離は140メートル。今回はこのあたりでのバレ、キレを経験している。
糸の巻き量と径の関係を測ってみると、フライラインが全て巻かれている状態で、7センチ。フライラインが全て出て、ダクロンバッキングになった段階で5.4センチ。ダクロンバッキングも出され、ダイニーマになった時点では3.5センチ。これが何を意味するかというと、1メートルの糸を引きだすのに、フライラインが全て入っている状態ではリールは4.5回転、フライラインが出きった時点(30メートル)では5.9回転、ダクロンバッキングが終った段階(150メートル)で9回転することになる。単純に考えてドラッグの効きは倍になってしまう訳だ。だから、ドラッグの強度をそれに合わせてファイト中に変更する必要がある。
そのドラッグの調整にはリールによって2方式ある。ひとつは、システム2のようにネジ式のもの。これはどこまででもきつく、あるいは逆に緩めることができる。もう一つは今回使ったオービスのDXRのようにレバー式のもの。こちらは簡単に強弱の調整ができる利点はあるものの、ドラッグ調整範囲があらかじめ決められている。最大限もしくは最小限を変更するには、リールを分解してネジを外し、セッティングをやり直さなければならない。魚がかかっている最中にできることではない。今回帰ってきてから、掃除をかねてリールを分解し、ドラッグを調整し直した。最大限に強くしてバックラッシュがかからない程度、最小にするとほとんどフリーという状態である。これこそが必要なセッティングだったのだ。アイツタキに行く前に、あるいはせめて3尾目をかける前に調整し直していれば、1尾くらいはボーンフィッシュの顔を見ることができたのかも知れない。
が、ドラッグに問題があると気付いたのは、3尾目をかけている最中である。1尾目はウインドノットのせいだと思っていたし、2尾目は自分の情けないミスによるバックラッシュ。3尾目をかけ、魚がぐんぐんと走るたびにリールがきつくなっていくのを感じ、こりゃ、ドラッグをどうにかしないとどうにもならん、と思ったのだ。
さて、準備は整った。必要なフライパターンとサイズも分かったし、リールの調整も完璧だ。ボーンフィッシュの見つけ方ならガイドと互角。任せてくれ、今度は負けない。
で、いつ、行けるんだ?
ぐぐぐ、悔しいぞぉ!
 

 

10月22日

しばらく前に、家からタウポに向かう途中、面白いものを見つけた。なかなかセンスがいい。おねぇちゃんだけ、というところになにやら作者のメッセージが潜んでいるような、いないような。

それからしばらくして、こんなものも見かけた。悪くはないのだが、最初のものほどのインパクトも面白さもない。それにフライじゃなくて、ルアーというのが今一つ。

このところ天気がよいせいか、河辺を散歩していると地元のガキどもがバチャン、ドボンと水しぶきを上げてトンガリロ川に飛び込んで遊んでいる。そこまで暑くはないだろうが、と思うのだが、まぁ元気なのはなによりだ。僕も、そろそろ、カヤックと夕まずめの準備をしないといけないな。

 

 

10月30日

先日、久しぶりにタウポ湖にジョギングカヤックをしに行った。そこで、とんでもない事実を突きつけられ、愕然としてしまった。カートホイールが回らないとか、ロールが上がらないというような生易しいものではない。なんと、パドル用ショーツを履いたら、下腹があまりにも見事にぽこりと突き出ていることに気付いたのだ。いつから、こんな情けない姿になってしまったのだ?ハラホロヒレハレ。慌てて腹筋トレーニングをやったりする。

昨日は夕まずめのトンガリロ川に出かけた。やたらに風が冷たく、これではハッチもないかと危惧していたら、コロビュリスカスと思しき大型のカゲロウがじたばたとハッチを始めた。さぞかしライズの雨になるだろうという期待を見事に裏切り、ほとんど水面は割れず。ごくごくたまにモコリパチャリと波紋が広がるだけであった。まぁ釣り初めということでとにかくお顔を拝見と岸ぎりぎりのライズに12番のフライを投げたら、20センチちょいのブラウンが釣れた。釣りをしている間中、足下で黒くて大きいのがドッパンバッチャンと跳ね回り泳ぎ回っていたが、とくにこの駄犬のせいでライズがなかったとは思えない。ここ数日やたらと冷え込んでいるので、この次に気温が上昇したときが狙い目かも知れない。
久しぶりにドライフライのボックスを開けたら、コロビュリスカスやカディスといった良く使うフライがほとんど入っていないことが判明。巻いておかないと。