トラウトバム日本語版        

DIARY

10月17日

日本からやっと帰国。帰ってきてしまえば、あそこであんなことやこんなことをしていたのがまるで嘘のよう。
それにしても日本という国は、たくさんの物が溢れているところだと、改めて感心。おまけに値段も安いし。あれでは、物欲を刺激されないほうがむずかしい。それに乗ったのか、乗らされたのか、僕もあれこれ買い込んでしまった。
サヨリ用延べ竿 2780円(×2本)、サヨリ用たま浮き 120円、イカ釣り用エギ 280円、イカ釣り用PE糸 2000円、イカ釣り用リール 1980円、イカ釣り用たも網 2980円、鱒釣り用ティペット(フロロカーボン)100メートル 700円。その他あれも、これも。
しばらくは、買い込んだものを眺めるだけで幸せになれそう。

京都の町外れをぶらぶら歩きながら、「ここだったら、しばらくは住んでもいいかもな」と思った。東京では全くそんなことは思いもしなかったのに。東京に戻ってから、しばらくそのことを考えていて、多分、京都はどこにいても山が見えるからかもしれないと思いあたった。ではニュージーランドをかたづけて移住し直すかといえば、盆地だから夏は暑いだろうし、川には鱒はいないし、カヤックができるほどの水量もないし、さりとて海は遠いしと、いいことはあんまりないようなので、ただの一時の気の迷い、うたかたの蜃気楼。

有明コロシアムでK1ミドル級を観戦。獏さんのおごり。どうもごちそうさま。
開場とほぼ同時に入ったので、まだぱらぱらの客しかいない、照明も落とされていない中で行われた前座の新人戦から始まる。見ているうちに、なぜだか知らないけれど涙が出そうになった。ほとんど誰も注意を払っていない、声援も飛ばないざわついた空間に、ピシッ、バッ、シュッと、肉を打つ音、グラブのぶつかる音、鋭い吐息だけが時折響く。そんな光景に、言葉にしてしまえば、情けなくも恥ずかしいだけのどうしようもない思いがこみ上げてきたのだ。
いたく当惑したけれど、同時になんだか嬉しくなるような体験だった。

今回は、いろいろな意味で、日本に行ってよかったなと思った。
一段落したら、釣りにでも行こう。

10月22日

ニュージーランドを出る前にPCIカード(USB)を修理に出していたのだが、戻ってきても全く同じ症状。4つあるポートが一つしか使えない。日本でUSBマウスなんてものを買ってきてしまったので、是非とも4つ全部使えるようにしたい。さもないと、CDライターだのフィルムスキャナだのを使うたびに、マウスを昔のものに戻さなければならなくなる。かといって、再び修理に出してもはたして直るのかどうか、そこのところがおぼつかないし、店のあまりよくわかっていないお姉さんに説明するのも面倒だ。それで、いろいろネットで探したら、新品でも4千円程度なので新しく買うことに決めた。でも、こんなことなら、日本に行ったときに買ってきたのに、、、。

一階のコンクリート打ちぱなしだった床に、タイルが入った。玄関部分は、木を埋め込んだりして、ちょっと洒落てみた。少しずつ家らしくなっていく。もっとも完成までには、あと数年かかるだろうけれど。

10月30日

テレビのお仕事がひとつ入った。これで、3カ月は食べていける。ありがたや、ありがたや。
しかし、毎度のことながら、どうしてテレビってこんなにお金があるんだろう?

日本から帰ってきて2週間。いろいろと仕事やら雑事やらに追われていたけれど、ようやく落ち着いてきた感じ。合間をみつけて畑にも手を入れ、種まき、苗の植え替えなども終了。いよいよ夏を待つばかりだ。
その前に、せっかく買ってきた、サヨリ用ロッドとイカ様エギングタックルを試さねば。

3時頃にトンガリロ川へ釣りに行く。釣り人の姿もほとんどなく、平和な春の川。いつものポイントを覗き込んでみると、底にへばりついた鱒があちこちにいる。さっそくトンガリロスタイルのニンフィングで重たいフライとエッグフライを投げる。数投目で雄が一尾釣れた。
キャストしている間、そして鱒とファイトしながらずっと気になっていたのだが、対岸近くでライズしている魚が何尾もいるのだ。淵の開きあたりにいるのは明らかに手のひらサイズの今年生まれた子供だが、その上流にいるやつは、ライズの後にモワリと見える背びれから言って、そんなに小さくはなさそうだ。ただ対岸なので、20メートルほどキャストしなければならないうえに、間に本流が入っているからすぐにドラッグがかかってしまう。どうしようかと考えながら見ている間にも、モワリ、シャボリとライズをしている。矢も盾もたまらなくなって、ドライフライに換える。羽化しているのは14番ほどのカゲロウだけれど、持ち合わせがなかったので、サイズも形も違う12番のカディスを結ぶ。何度か目のキャストで、ショボリと魚がフライを食った。寄せてみると、40センチあるかないかの小型ながら、元気なニジマスだった。
まずは、今シーズン初のドライフライでの一尾。
ああ、おもしろかった。
明日も釣りに行こうっと。

日本でフィルムスキャナを買ってきたので、嬉しくなってポジをいくつかスキャンした。Insectsの写真もいくつかそれにともない交換。

10月31日

フレキシ湖の流れ込みとその下の運河に行く。
流れ込みでは、さらさらと速い流れの浅場に一尾いたのを見つけたけれど、僕の気づくのが遅かったのと駄犬があたりを走り回ったおかげで、フライを二回投げたら、さっさと下流に下っていってしまった。流れ込み最上流の小さなプールにも一尾いたものの、多分産卵気分でいるのか、ドライはもとより重たいニンフを沈めても見向きもしないし、逃げもしない。それで運河に場所替え。風が強く水面は波立ってしまい、魚の気配はない。帰ろうかと思いつつ、それでもひょっとしてと、サンドイッチを頬張りながら川面に目を向けていたら、風が一瞬止んだときに魚の姿がいくつか浮かび上がった。お、これはいけるかも。それでドライを投げたら、何尾かは反応してくれたのに、食ってくれればすっぽ抜け、そうでなければドラッグがかかるまでじっと見られて終わり。あの手この手で粘って、ドライ、ニンフの両方で釣らせてもらう。
昨日は、ドライの初ニジマスで、今日はドライとニンフの初ブラウン。なかなか幸せな人生。

明日からの1週間は、テレビのロケハンのお仕事。北はタネ・マフタの森から、南はインバカーギルまで、ディレクターの足となって駆けずり回る日々である。
帰ってきたら、また釣りに行こうっと。あ、それともカヤックにしようかな。やっぱり夏はいいなぁ、遊ぶことが沢山あって。