DIARY

11月1日

俺は、確かに貧乏だ。でもなぁ、でもなぁ。
60万弱のものを160万ちょいで売るって、中間マージン取り過ぎじゃないか、お前。ぼりすぎじゃんか。ソープのお姉さんが、100万稼ぐのとは意味が違うぞ、意味が。お姉さん達はそれだけいろいろな意味で過酷な労働をしてるから納得できる。でもな、でもな、、、。
あ”ーーーーーーーー。
そんな会社の広告文を書かねばならない自分が情けない。
おまけに忙しくて、今週は釣りに行けない。とほほほ。
 

11月7日

The Visual System of Fishを読みすすめる。
魚が釣りたくて、山に入ったのだが、高巻きの途中でつい気の迷いから森の奥深く足を踏み入れ、魚はおろか、川がどこを流れているのかすら分からなくなってしまった。だからといって今更戻ろうにも戻れず、仕方なく歩き続けている。と、まぁ、そんな感じだ。tectalとかtectumって、日本語ではなんと言うんだろう。脳の一部というのは分かるんだけれどね。辞書にも載ってないし。
 

11月9日

一昨年だかにやった大脳生理学の教科書を見たら、ちゃんと出てるじゃん。しかもご丁寧に赤線までくっきり引いてあって。誰だ、こんなとこに線引いたのは。絶対に俺じゃないぞ。だって全然覚えてないもん。
mesencephalon(中脳)の天井部のことですね、tectumって。

はあぁ、それにつけても仕事の欲しさよ。
まずいっす、このままじゃ。
と思いつつ、釣りに行こうかと考えている私って、やっぱり白痴?
それとも末期的激症現実逃避?

昨日タウポの銀行に行く途中、車を運転しながら「釣りの言い訳」ネタを考えつく。正確には別の話のために思いついたものを、順番を変えれば「言い訳」で使えることに気づいたのだけの話。帰りは、もう一つあるネタをいじくり回す。核になる部分をそれらしく見せるために、いろいろと知識を漁らなければならない。こんな時、日本語の本の図書館なり本屋が近くにあればいいのだけれど、まさかニュージーランドの那須高原、ツランギじゃ期待するほうが間違っている。またぞろインターネットであれこれ探すしかないみたいだ。

 

11月10日

今道友信の「自然哲学序説」を読みすすめる。うーん、これってありか。というのが正直な感想。
哲学というより、トンデモ系と言った方がいいような、、、。
元東大教授、清心女子大教授、国際美学会名誉会長、国際哲学会常任委員、国際形而上学会副会長etc,etc。肩書きは確かに凄いから、昔はちゃんとした仕事をしたのかも知れないけれど、「自然哲学序説」を読むかぎりでは、論理も何もあったものじゃない話の進め方だぞ。1922年生まれだから、77歳ですか。昔は頭も切れて優れていたのに、年を取ったらトンデモ系に走るというのは、ロケット開発で名を馳せた糸川氏の例もあることだし、それほど珍しくないのかも知れない。
それにしても「哲学」と銘打っているからには、もう少し論理的になって欲しいよなぁ。
これじゃまるで宗教のご託宣みたいじゃん。
買って損したと思うけれど、このまま読まずに捨てるというと払ったお金が余計に勿体ないので、仕方なく読みすすめる。

「釣りの言い訳19」のプロット作りを昨日終えたので、今日から書き始める。今までとはちょっと違った味が出せるか。主人公の考えを俺の考えと勘違いするような奴もいるかも知れんが、ま、それも一興。

ただいま前線が通過中とかでひどい天気。タウポ地区には大雨注意報も出てるらしい。明日には小降りになると言っているけれど、この週末に釣りになるのかどうかってところ。

 

11月14日

雑誌の取材と称して、ウェリントンの高島さんの家に遊びに行く。スッゲェいい眺めの、スッゲェ恰好いい家。中に入ると高橋硫酸じゃない、リュウさん夫婦もすでに到着していた。長髪にヒゲ、オレンジ色の服を着ていたので、思わずバグワン系かと身構えたけれど、そうではなかったみたい。カヤック絡みでニュージーランドに住み着いた人たちの話を聞くというのが表向きの理由。実際は、私一人ただひたすら飲んで、私一人つぶれる。恥ずかしい。

昨日から久しぶりにようやくの晴れ。夕方辺り、川でも見に行ってみよう。
んでもって、良さそうな感じだったら、明日、釣りに行こうっと。
仕事のことはあとで考えればいいや。

 

11月15日

トンガリロに川の様子を見に行く。水温12度。ようやく水が引き始めた感じで、うっすらと緑濁りが入っている。お手製捕虫ネット(割り箸に、レースのカーテンの切れ端で作った)を入れてみると、結構砂などのごみが入る。この状態を鱒から見たら、やはり流れてくるものの中から、いかにゴミでなく、食べられるものを見つけられるかがポイントだろう。となると、フライも、どうしたらゴミに見えないか、そこが肝になるのかも。
ついでに、あちこちひっくり返して、虫の写真を撮る。5種類追加。

二日酔いから、やっと回復。はぁ、疲れた。

 

11月17日

ツランギまで夕飯の買い物に行った帰りにトンガリロ川に寄ってみる。だいぶ水が引き、一部流れが変わったのがわかる。流れから隔離されつつある小さな溜まりを覗いてみると、頭を出している石の水面下にColoburiscus humeralisがしがみついているのを見つけた。えらが固定された種なので、流れがないと呼吸ができない。それで息苦しくなって石裏から出てきたのかと、そっと捕まえて流れに戻してやる。その直後、近くの石の、水面から少し上に同種の脱ぎ捨てた殻を見つけた。ということは、Coloburiscusは離水羽化で、さっきのやつも羽化しようとしていたのだろうか。だったら、まさに、小さな親切大きなお世話をしたことになる。しかも、羽化の瞬間を見れたかも知れないのに。ぐぐぐ、無知の涙なり。
同じ溜まりで、ぐったりとしたストーンフライを見つける。これこそ、大水で流されたクチだろう。写真を撮って、流れに移し替える。
 

11月22日

土曜日の朝、ベッドでぐずぐずしていたら電話があった。面倒くさかったので、そのまま眠り続けて留守電に相手をしてもらう。後でテープを戻してみたら、藤門さんからだった。野田さんと近くに来ているので、会いたいとの由。結局その夜は連絡が付かず、翌朝モーテルに電話をしたら、月曜日に家の近くを通るので、寄るとのこと。場所を良く覚えてないというので、ファックスで地図を送る。
そして、今日がその月曜日。

来ない。

待てど、暮らせど来ない。でもいつ訪ねて来るか分からないので、家を空ける訳にもいかない。釣りはもちろん、スーパーに買い物にも行けない。
おい、こら、おっさん。来ないなら来ないで、電話くらいしろよな。
実は、藤門さんには去年もこれと同じことをやられている。来るというので、他の用事を切り上げて家に戻ったというのにすっぽかされたのだ。しかも連絡無しだ。
有名人だからって、これはないよな。
ずっと家にいなくちゃならなかったおかげで、一日中仕事をしてしまったじゃないか。プリプリ。おかげで随分とはかどっちまったぞ。ブイブイ。

仕事ばかりしているのも悔しいから、Fly Fishermanに載っていた、横曲がり横倒しスピナーを自分なりに巻いてみた。オリジナルは、TMC101のシャンクを横にねじ曲げているが、将来のへそ曲がりがさらにこれを曲げて、グラブフックを水平に使って巻いてみた。出来上がりは似ている。でも、すっげぇ巻きづらい。
明日早速どこかの川に行って試してみようと思う。

追記
と一端これを書いてアップしたのは、夜十時半。その二十分後に、藤門さんから電話があった。
「あれ、ごめん、俺、今日って言った? え? そう? ごめん、日にち間違えてた」
っつうことで、明日来るんだそうな。
おっさぁーん、しっかりしてくれぇ。
でもそれじゃ、俺、釣りに行けねぇじゃん。せっかくの毛鉤、試せないじゃんかよぉ。
世界は俺に釣りをさせないつもりか!それが世界の定説かよ、おい。

 

11月23日

昼前に、藤門さん、野田さん来宅。一緒にタウポまで行って、中華料理屋で飯を食う。
本を出したらと言われる。名刺代わりにまず1冊出すことだよ。帯なり、後書きなり書いてあげるよ、とも言われる。
出してぇ!出してぇっす。思いっきり、生で出したいんすよ。
しかしなぁ。
つり人社の方、どうなってんだろう。出してくれるのかなぁ。それとも、他を当たった方がいいのかなぁ。駄目なら駄目とはっきり言ってくれた方が嬉しい。
とりあえず、書き続けるよりないんだけどね。

タウポで二人と別れ、そのまま速攻で家に帰り、竿を掴んで川に行く。この間から気になっていたトンガリロのポイント。水温14度。カディスにピン子がライズしていた。チー、チーと草ゼミの声を聞いた気がしたので、セミを結ぶ。見事無視。カディスにしたら、一発で出る。
真っ黒いカゲロウを見つけたので、写真を撮る。多分、Deleatidium vernaleだと思うのだけれど、全く自信無し。
ちょっとした瀬の開きに、50クラスを2尾半見つける。半というのは、最後のやつは、魚かどうか半信半疑ということ。カディスではなんの反応もない。そこで、グリーンビートルに換えたら、すぐに出た。

本が出るのかどうか全然分からないし、これから一体どうやってお金を稼ぐのか皆目見当も付かないけれど、家から10分のところに川があって、昼の2時半にのこのこ出かけて行って、こんな風に釣れるのだから、結構幸せな人生かも。
そう思った、午後だった。

 

11月25日

買い物の帰りに、川の様子を見る。この間行った溜まりはもうだいぶ小さくなっていた。よく見ると、あちこちにColoburiscusがひっくり返っている。やはり、流れのないところでは生きていけないのだろう。となると、この間石に捕まっていたのを流れに移したのは、やっぱり善行だったのかも。
石の水面直下のところに、Oniscigasterを見つける。よくよく見れば、空だった。ハッチした抜け殻にしては、やたらと生々しいものだった。それにしても大きい。

嫌な文章を書く。書きたいことを書くのではなく、嫌なことを書きながら、それと悟られないようにする。これでこそ、プロというものだ。
と、思いながらも、やっぱり内心忸怩たるものあり。
ああ、くそぉ。釣りに行きてぇ!カヤック漕ぎてぇ!

リンクをちょっといじる。消えた「Metal sex」のかわりに「菜摘ひかるの性的冒険」を、また電波系に今とっても人気の「シャクティ・パット・グル・ファンデーション」を入れた。

 

11月28日

昨夜から、ものすごい雨が降っている。今は、もう昼だというのに、激しい雨脚はちっとも衰えない。多分、タウポ、ツランギ、ムルパラの川はみんなまっ茶色に濁って釣りどころではないはず。こんな時、「ああ、釣りガイドでなくて良かった」と心底思う。釣りガイドは、自然相手の商売ではない。自然を仕事場にした、人間相手の客商売だ。台風が来ようが、川が氾濫しようが、「大きな鱒を釣りたいんです」と目をきらきらさせながら、お客さんはやって来る。仕事をしなければならない。でも、一体どこに行けばいいのだ?いっそ、漁師の方がこんな時は朝から酒でもかっ食らって寝ていられる分、楽かも知れないとも思う。
かなりの雨だから、これでまた川の流れが変わるだろう。せっかく見つけたポイントも、もうないかも知れない。何もかも一からやり直しだ。それも、ガイドとしては辛い。
ああ、ほんとに釣りガイドを辞めてよかった。
 

11月30日

ホワイトウォーター・ロデオ・チャンピオンシップの取材が明日から始まる。今日はその下見に行ってきた。それにしても、なんでこいつらこんなに上手いんだよぉ。波の上で、くるくる、ぐるぐる、ひょいひょい回り続ける。横に回って、縦に回って、後ろに回って、回って、回って。
見ているだけだと、ほんとに簡単に見えるんだよな、これが。でも、実際あの波の中に入ると、もうぐしゃぐしゃになるだけなのに、俺なんて。
でも、それも当たり前といえば、当たり前のこと。俺があれくらいできていたら、俺も選手権に出場しているはずだもん。
と言うわけで、今週は釣りにいけない。来週は、もう、ばっちり釣ったるかんね。

もう一年ほど悪化したり良くなったりを続けている腱鞘炎。頭に来たので、手首にアルミの骨入りサポータを付けて固定し、それに親指まで巻き込んで、全く使えないようにした。実は、もうそうやって一月近くなる。おかげで、最近ようやく、朝、痛みで目が覚めることはなくなった。あと1週間、こうやって我慢したら、カヤックも釣りも全開で解禁するつもり。
みてろ!