トラウトバム日本語版        

DIARY

11月13日

「ニュージーランドは空気が綺麗なので、紫外線が強い」と書いたら、「それは、オゾン層が破壊されているからではないですか」と物言いがついた。オゾン層破壊とニュージーランドの紫外線の強さは関係ないということだけは知っていたのだが(どんなにオゾンホールが大きくなっても、ニュージーランド上空には至らない)、「だって、違うんだもん。そうじゃないんだもん」と言い張るだけでは相手を説得できるとも思えないので、国立研究所(National Institute of Water and Atmospheric Research)に問い合わせてみた。こういうときは、専門家の一言が私のような素人の100万語よりも重みがある。
1. 地球が太陽の周りを回る公転軌道が楕円であり、太陽がその中心にないため、南半球の夏に太陽と最も近づき、北半球の夏に最も遠くなる。
2.  もともと、南半球のオゾン層は北半球よりも薄い(オゾン層破壊とは無関係)。
3. 空気中の微粒子が北半球より、南半球の方が少ない。これは、工業的汚染だけでなく、砂漠から舞い上がる砂(黄砂)、さらには水蒸気(湿度)などが含まれる。
1と2が原因となって、それぞれ7%ずつ紫外線が強くなる。残りのほとんどは、3だろうとのこと。ちなみに、ヨーロッパとの比較では、ニュージーランドの紫外線は40〜50%強くなっているらしい。
ということを書いて送ったので、向こうも納得するであろう。
それにしても、「オゾン層が破壊されている」(事実)と「オゾン層が破壊されると、紫外線が強くなる」(これも事実)が、いつのまにか「ニュージーランドは紫外線が強い」(またまた事実)とくっついてしまって、「オゾン層が破壊されているので、ニュージーランドは紫外線が強い」(これは嘘)として広まっているようだ。上に挙げた1、2、3のような至極真っ当な理由は、当たり前すぎて学校のお勉強の延長のようなものだからつまらないけれど、それよりも、「オゾン層の破壊」の方がドラマティックで話題性があり、それで受けるということだろうか。

「絶世の美女も、愛を告白する」(事実)
「絶世の美女に愛を告白されると、男は嬉しくなる」(事実)
「斉藤は、嬉しくなることがよくある」(事実)
ということなので、今度から私が嬉しそうにしているときは、「ああ、またまた、絶世の美女に愛を告白されてしまったのだな」と嫉んでいただきたい。

 

 

11月14日

昨日から女房が仕事に出かけて留守。というわけで、いきなり茹でた大豆をオーブンに入れ、納豆を作る。ううむ、まさに臭うがごとしの独り者であるな。

昨日の論理だては、完全なパラレルではないことに気付いた。オゾン層、紫外線、ニュージーランドの組み合わせは、「オゾン層が破壊されている」がある特殊な事実の表明(以前はそうでなかったのに、現在はそうである)なのに対し、「絶世の美女も愛の告白をする」は、同じ事実表明でもより一般的でいわば不変の事実であった。だから、この部分がなくとも「斉藤、絶世の美女」は成立してしまう。
ということで、訂正版
オリジナル
「もしオゾン層が破壊されたら、紫外線は強くなる」
「今、オゾン層は破壊されている」
「ところで、ニュージーランドの紫外線は強い」
「以上から、ニュージーランドの紫外線が強いのは、オゾン層が破壊されているからである」

「もし戦争が起こったら、死者が出る」
「今、戦争は起こっている」
「ところで、ニュージーランドでは死者が出ている」
「以上から、ニュージーランドで死者が出ているのは、戦争が起こっているからである」

「もし斉藤が酒を飲み始めたら、ボトルは空になる」
「今、斉藤は酒を飲み始めている」
「ところで、○○のボトルは空である」
「以上から、○○のボトルが空なのは、斉藤が酒を飲み始めたからである」
と、○○に自分の名前を入れて難癖をつけたりされても困るな。反論を考えねば。

昼過ぎにトンガリロ川に駄犬の散歩に行ってみたら、真っ茶色に濁っていたので、夕まずめは諦める。

 

 

11月17日

オールブラックスは、なんとも悔しい。なぜ負ける!前回のワールドカップでも準決勝でフランスにやられてるし。今回はなぜかボールをボロボロ落としたりして、精彩に欠けること著しいったらありゃしない。

納豆は、オーブンよりもホットウォーターシリンダーの上の方が安易かつ低コスト(つうか、タダ)できることが判明。ヨーグルトメーカーに茹でた大豆と納豆菌を入れ、お湯は入れずにそのままホットウォーターシリンダーの上に置き、周りに断熱材(世間では枕とも言う)で囲ってしまえば、いい具合に温度が保てる。先ほど1日経過時点での納豆を食べてみたが、もう少し熟成が必要なようだ。納豆菌が皮だけで中の方まで浸透してない。しかし、これで納豆王国の建設のための地盤固めはできた。

夕まずめに出かけた。
誰もいない河原に、冷たい風だけが吹きすさんでいる。
冬用の厚手のシャツに厚手のフリースを身にまとう。
水面に、ぽつりぽつりとカゲロウの姿が浮かび上がった。
なのに、ライズは、これっぽっちも、たったのひとつもなかった。
駄犬だけが、嬉しそうにあたりを走ったり、泳いだりしている。
私は、うなだれて、家に帰った。

オールブラックスは負ける、魚には嫌われる。
溜め息が出るような人生じゃないか。