トラウトバム日本語版        

DIARY

6月4日

引き割りでなく、丸大豆の納豆に再度挑戦したのだが、糸を引かない。粘りが全然ない。これはどうしたものかと、原因を探るべく、インターネットをふらふらしていたら、こんなものがあった。これさえあれば恐いものなしに違いないとよく見て、値段に吹っ飛んだ。ご家庭で簡単にあなたにも作れますって、機械を手に入れるのがちっとも簡単じゃねぇじゃねえか。
やはり試行錯誤を繰り返すよりなさそうだ。今考えているのは、水に戻す前に一部の大豆をミキサーで微塵に砕いて、その粉を一緒に納豆化させるというもの。これなら、納豆菌の繁殖できる表面積が多くなって、糸の引きがよくなるのではないだろうか。
残念なことに、明日から土曜の夜まで仕事が入っているので、納豆作りに取り掛かれない。そうこうするうちに、撲滅主義者が帰ってきてしまうではないか。非常にタイトなスケジュールでの納豆工作になりそうである。

6月10日

7,8,9日と3日間、雑誌の取材のお手伝い。編集、カメラマン、旅行関係者2名の計4名のお世話をする。釣りの案内は、ちゃんと現職釣りガイドがいるので、僕はその回りをただうろうろするだけの、同行者。ラクチンなり。
7日は、タウランガ・タウポ川で5,6尾を釣る。
8日は、湖で3時間ほど。やはり、5,6尾を釣る。ガイドのボートのすぐ隣りに僕のボートを付け、僕のボートにカメラマンを乗せ撮影していた。当りが遠のいたので、ガイドが場所移動したのを追っかけて、エンジンをかけようとしたら、「ビー」とブザーが鳴り響き、一向にかからない。しばらくやっていてもどうにもかからないので、仕方なく予備のエンジンで陸に戻る。トレイラーに乗せ陸に引き上げてから、試しにキーを回したら、一発でかかった。なんじゃらほい。ちなみに、僕らが場所を変えた後も粘っていたボートは、10尾釣り、しかも8ポンドと10ポンドがきたそうな。悔しい。
9日は、トンガリロ川カトル・ラスラープール。もう既に二人の釣り人がいたが、3尾釣った後で、どこかに移動してしまった。代わりに僕らが釣り始めてしばらくしたら、どうやら群れが昇ってきたらしく、ひたすら釣れ続ける。合計30尾ほどかけた、と思う。18尾までは勘定していたのだが、そこから先はもう分からなくなってしまったのだ。いや、とにかく釣れた一日であった。僕もおすそ分けでちょっと釣らさせてもらって、4尾ほどと遊んだ。

今日は別の仕事があったので、3時頃まで家にいた。一段落したところで、釣り具屋にマテリアルを買いに行ったら、カウンターの上に馬鹿でかいブラウンが二尾、ビニール袋に入って置いてある。話を聞いたら、僕が来る直前にももう一尾持ち込まれ、どれも10ポンドクラスだとのこと。明け方に降った雨で川に濁りが入り、それでブラウンが移動したらしい。釣れたのはいずれもハイドロプール。産卵遡上の釣りは、まさに「Right time right place」なのだなと改めて認識。
明日は釣りに行こう。

トンガリロ用超ヘビーニンフ、究極の姿。
10番のフックに、ビーズヘッドを通します。その後ろに25センチほどの鉛線を巻きます。タイイングスレッドで鉛線を抑えつつフライの形を調え、赤、緑、黒など好みの色の銅線を巻きます。これをエポキシで固めたら出来上がり。テイル、ウィングケース、レッグなど余分なものは一切省いたスムースな流線型ですので、空気抵抗も水の抵抗もほとんどありません。キャスト時に回転することもなく、沈みも早い。あくまでも機能のみを追求したヘビーニンフ。気になるお値段は、一つ$3.50でございます。

6月11日

あの夢よ、もう一度。ということで、午前中二時間ほど、土曜日に大漁に恵まれたカトル・ラスラーに再び赴く。最初に前回十五尾ほどかかったプールの後半部分で一時間ほど粘るが、当りもカスリもしない。それで、今度はプールの頭、前回七尾ほど釣ったところでやったら、一時間で四尾。決して悪い数ではないが、群れは通過してしまったらしい。残念。
釣れたのはどれも51から55センチのフレッシュラン。今年のトンガリロの鱒は、サイズが小さい。三年前の6月に大きな洪水があり、それでその年の卵、稚魚の多くが流れてしまったせいらしい。数は出ているので、楽しめるから、よしとしよう。

6月15日

2月に発行された雑誌の原稿料がやっと入った。おかげで、今月、来月はちょっと息がつける。と思ったのも束の間、ついふらふらとメモリを買ってしまった。あほやんか。でもさぁ、それまでネットであれこれさがしても1万7千円前後だったのが、1万円切ってたんだよなぁ。もう古いコンピュータだし、これから先この規格のメモリがいつまで製造されるのかも分かんないし。と、自分に言い聞かせて、買ってしまった。この次は、CPUのアップグレードだなと考えていたりするんだけど、さすがにそれはしばらくお預け。

今度、つり人社から出していただくことになった単行本のタイトルを考える。
「だらだら鱒暮らし」
「鱒をとるか、妻をとるか」
「人生 鱒まみれ」
「五体鱒属」
「人生即満鱒」
「人生 鱒渡り」
ううう、う。どうも、いまひとつ、しっくりこんなぁ。

6月19日

お昼ちょっと前にトンガリロ川カトル・ラスラープールに行ったら、もう既に二人の釣り人が入っていた。それで、その一つ上のローワー・バーチプールへと崖を下りる。女房がプールの中ほどでやり、僕はその下流を試した後で上に移動。なかなか反応がないのを忍耐にものを言わせ、しつこく狙ってやっとの思いで一尾釣るが、なんと44センチの超小物。キープサイズにも満たない。しかし、それでもちゃんと産卵遡上の鱒だから恐れ入る。写真をバチバチ撮ってリリースした。こんな釣れないときに粘ることもないと、地の利を活かして、すぐに退散。
明日の朝に賭けよう。

この二週間ほどの間に、あちこちからウィルスメールをいただく。幸い、家はマックで、しかもメイラーはアウトルックでもネスケでもないので、被害の心配がほとんどない。マイナーでいるということは、それなりのデメリットもあるがメリットもあるのだと改めて認識。

6月20日

ぶぶぶぶぶ、ぶ。仕事が一度に二つもポシャった。
一つは、きっと使ってもらえると踏んでいた海外取材の記事。まぁ、わしの読みが甘かったと言われればそれまでだが、とても残念である。どこかよそを探さねばならぬ。
もう一つは、テレビ番組のリサーチ並びにコーディネイト。おちゃらけた番組ではなく、経済金融絡みの近代文明批評的な番組。その骨子となる本が、NZをえらく持ち上げ、国ぐるみで改革的な運動を支持しているみたいに褒めていたのだ。それで、NZ取材をしようという話になったのだが、頼まれて調べてみたら、事実は大きく違うことがわかった。調べれば調べるほど、現実は残酷であり、ユートピアではなかったのである。そのため、取材も中止。私の仕事も泡と消えた。

今日、テレビで「信用詐欺」と言う番組をやっていた。現在ニュージーランドを舞台にして、いろいろ動き回っている組織的な詐欺についてである。Get rich quick scheme、働かずに金持ちになろうと持ちかけ、結局は元も子もなくなる。ネズミ講などもこのうちに入る。番組の中で紹介されていたものの一つが、なんと、カヤック関係の友達が飲み込まれてしまったものだった。今ごろ、あいつはどうしているのだろうと、ふと、思った。
The only place where wealth comes before work is in the dictionary.
裕福が労働よりも前に来るただ一つの場所は、辞書である。
はい、わかりました。ちゃんと働きますです。

6月23日

テレビのリサーチ・コーディネイトの仕事、途中でポシャったとはいえ、当然のことながらそれまでに働いた分のお支払いをしていただけることになった。時間にして45時間分。それが、なんと「釣り師の言い訳」四回分より、ちょっと多い。
うーん。
そりゃ、専門誌だから「釣り師の言い訳」の原稿料は、一般誌に比べたらもともとかなり安いけれど、それにしてもなぁ。やっぱりテレビってお金が集まるんだなぁ、と感心。こんなリサーチの仕事が三回もあれば、「釣り師の言い訳」一年分というのも、なんとなく情けない。
で、その「言い訳」が書けずに、この三日間ほど四苦八苦していた。まったくいいアイデアが浮かばないのだ。それで、じっとパソコンの画面を見つめていると、つい、やらんでもいい、いらんことを始めてしまう。バックアップをとる。ネットに逃げる。メールを書きまくる。掲示板を蹴散らかす。そんなことを半日もやって、「ああ、俺は何をやっているんだ。ちっともアイデアなんて考えていないじゃないか」と罪悪感に囚われ、えいやっとワープロ以外のすべてのソフトを終了し、またじっと画面を見ているうちに、いつの間にかいらんことを、、、。

HTMLで飽き足らず、Java Scriptでも満足せず、DHTMLよりもすごいことしたいと思っている人って、FLASHを使っているらしい。とろいアナログモデムでもなんだこりゃと思うのだから、フレッツだのケーブルだので繋いでいる人なら、おやまぁと感心するんじゃないだろうか。そんな例をひとつ

6月25日

先週の月曜日に、健康診断を受けた。ニュージーランドの永住権を取る際に受けて以来だから、十六年ぶりだ。金曜日に医者から電話があって、血液検査の結果を教えてくれた。肝臓、腎臓ともに問題ないが、コレステロールが高いのだそうな。色々話したら、本当は朝から何も食べずに血液を採取しなければならないのに僕の場合は昼食の直後だったから、そのせいかも知れないという。おかげで、今日、もう一度採血される羽目となった。んん、もう。最初からそう言ってくれよな。二回も血を取られちまったじゃないか。
とりあえず前回の結果を教えてもらうと、成人では5.5ぐらいが普通なのに、僕は7もあったらしい。さっそくインターネットで調べてみる。日本人男子の場合、コレステロールは220mg/dl以下が好ましいとある。
あれ?
220?じゃ、僕の7つうのはなんですか?それだけ少なけりゃ、少なすぎることはあっても多いということはないんじゃないのぉ?
いや、待て。桁があまりにも違いすぎる。単なる間違いにしては差が大きいので、あちこち探し回ったら、アメリカ、日本ではデシリットル当たりに含まれるコレステロールの重量で表示するけれど、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどでは、1リットル中のコレステロール濃度で表現するとのこと。だから、僕の7というのは、7mmol/l(ミリモル/リットル)と言う数字であることが分かった。では、モル濃度と重量の関係はどうなっているのか?これを計算するには、コレステロールの分子量をかければよいのだが、それが分からないので再びあちこち検索をかけ、ようやく分子量は387だということを突き止めた。で、願いましてはパチパチパチと算出すれば、7mmol/l = 270.9mg/dlとなる。おお、やっぱり多いじゃん。
そんなに脂っこいものばかり食べてるとも思えないんだけどなぁ。

6月26日

「釣り師の言い訳」第三十七回の原稿を書き終わる。ふう。

血液検査の結果がもう出た。今度は、7.17だそうな。ということは、ですね、
0.00717(モル数)×387(分子量)÷10(デシリットル)×1000(mg)=277mg/dl
あれ?277mg/dlって、前回より高いじゃん。とほほ。
何でも遺伝的にコレステロールの高い人もいるということだから、そっちの路線でどうですかね。そういうことにしといてもらえませんか。あ、だめ?あ、そう。だめですか。
というわけで、近々栄養士さんとお会いして、食事について講義を受けることになってしまった。何を食っちゃいけないって言われるんだろう。まぁ、血のしたたるステーキは諦めるとして、どう間違っても、ラーメンにギョーザは駄目とは言わないだろうから、そのへんラッキーだな。って、そういう問題じゃないか。

6月28日

今日のトンガリロ情報。
昼前の一時間ほど、竿を振る。崖下のポイントに行ったら、もう、爺さんが一人入っていたので、さらにその下、昔のコウファイ・フラットのあった辺りまで足を伸ばしてみた。ここで釣りをするのは、98年の大水以後は初めて。対岸に一人入っていたが、見た感じは崖側の方が良さそうだ。で、ポン、ポンと雄のニジマスを二尾釣った。しかし、小さい。五十センチを切っている。リミットの四十五センチぎりぎりじゃないだろうか。見ていたら、上の爺さんは、五十五センチほどのやつを二尾あげていた。
その後、釣り具屋に行って、色々と話した。つまり、98年の7月に、トンガリロ川のプールを根こそぎ変えるような大水が出た。そのため、シーズン始めからその時までに産卵した卵、あるいは孵った稚魚は全滅したらしい。シーズン半ばの今、川に帰ってきているのは、その大水以降に産卵されたものと99年に生まれた2年ものである。
さて、ここからは、私の推測。
もし産卵時期が遺伝的に決まっているとしたら、シーズン後半に生まれたものはシーズン後半に川に入ってくるだろう。もちろん、100%確実ではないと思う。ちょうど鮭が基本的には生まれた川に帰ってくるけれど、100%ではないのと同じに。しかし90%の確率でも遺伝的に決定しているとすると、現在の事態をうまく説明できる。
7月現在のトンガリロ川には、ポスト98大水のニジはまだ川に入ってきておらず、99年ものが多い。早熟な遺伝子を持った小さなやつらだ。それに混ざってぽつぽつといい型の鱒が釣れるのは、産卵時期の遺伝が100%決定的ではなく、誤差があり、その誤差分が昇ってきていると理解できる。
この推測が正しいとすれば、次の3点が導き出される。
1.98年ものは、全体数が少ない。
2.全体数が少ないから、湖での生存競争のプレッシャーが低く、大きく育っている。
3.トンガリロ川に98年ものが本格的に遡上を開始するのは、8月から。

さて、この予想は、当るか?

6月30日

昨日、ツランギまで郵便を見に行ったら、つり人社から宅急便が届いていた。何だろうと開けてみると、おおお、もうができている!す、すげえ。目茶苦茶早くないか。というわけで、タイトルは僕が送ったアイデアは却下され、「巨大鱒に魅入られて、ニュージーランド暮らし」となりました。発売は7月15日、お値段は1400円プラス消費税です。よろしくお願いいたします。是非とも、お買い上げくださいますよう、何とぞ、平にお願いしますです。
ちなみに、僕が送ったタイトルアイデアは、「人生フルトラウト」「A Trout Bum In Paradise 桃源郷の鱒乞食」「ニュージーランド トラウトな日々」「羊の国 大鱒の川」「鱒色の人生」などなど。やっぱ、駄目か。
しかし、もう少し後になるかと思っていたので、あまりにも早い展開に、ちょっとびっくり。
以前、野田さんに「名刺代わりに一冊本を出しなさい」と言われたことがあるけれど、これでようやくその名刺ができたわけだ。頑張って、次も出せるようにしないとな。