トラウトバム日本語版        

DIARY

7月1日

いよいよ発行まであと2週間である。
あんまり嬉しかったので、昨日は一日、あちこちにメールを送りまくった。買ってくださいねの営業である。メールのないところにはファックスを送った。ファックスもない知り合いには、手紙を書いた。で、封に入れ、宛名を書き、切手を貼ろうとして、愕然としてしまった。
赤字じゃん。
手紙を受け取った人間が一冊買ってくれるとして、その代金の一部が印税として僕に入ってくるわけだけれど、源泉徴収で税金を天引きされたりすると、最終的に僕の手元に入ってくるお金では切手代にすらならないと言うことに気づいたのだ。
くううう。きびしいいいいっ。と、思わず、財津イチロウしてしまった。
え?一人10冊?ノルマ?え?え?え?

7月3日

とにかくどんなことでも使えるものは使って本を宣伝せねばということで、一番最初のページに本をどんと持ってきてしまった。

日曜日に高根さんと黒木さんが来宅。しこたま飲む。月曜日はトンガリロ川へ行き、7尾かけ、3尾ランディング。サイズは思ったほど悪くない。55センチほどか。しかし、雨が降っておらず、群れが上ってきていないので、非常に限られたポイントにしか魚がいない。その一箇所を知っているかどうかが釣れる、釣れないの分かれ目となる。
ランディングした鱒のうち2尾は雌だったのでキープ。いくらを醤油、ショウガ付けにし、身は三枚に下ろしてオーブンで焼いてたべた。美味、美味。おかげでまたまたワインを飲んでしまう。
今日は、僕は仕事があったので、家に残ったけれど、二人はタウランガ・タウポ川に出かけた。

7月4日

掲示板にもう既に拙著をお店で買われたという方の書き込みがあったので、試しにbk1で探してみたら、ちゃんと売っておりました。本の奥付きのところに「7月15日初版発行」とあるから、てっきりその日が売り出し日なのかと思っていた。なにぶん、まぁ、初めてなことなので、良く分かりません。
ところで、実を言うと、あの本の文字校正は、まったくやっていない。原稿を送って、次の段階はもう出来上がりが来てしまったのだ。そう言うことですので、まぁ、誤字脱字は、単純なミスということで許してください。ただ、一箇所、どうにもならない間違い。写真のキャプションで、誰が見てもニジマスなのに、ブラウンと書いてある。今、僕が送ったオリジナルのキャプションを確認したけれど、ちゃんとニジマスとなっている。と言うわけで、決して斉藤がニジマスとブラウンの区別もつかないわけではありませんので。

7月8日

このところ雨がとんと降らない。おかげで、鱒が上ってこない。そこ、ここに散らばっている鱒をつつくように拾ってくるしかない。それはそれで面白い。しかし、それには、魚の着き場を知らないと話にならない。幅20メートルほどの川の中から、ある一点、2×5メートルほどの小さなスポットを探り出し、そこだけを重点的に攻めまくらなければならないからだ。けれど、重箱の隅をつつくようなそんなポイントを、いくつも見つけるのには、何日も何日も川に通って釣りまくらないとならない。ガイドを辞めてしまった今、僕が知っているのは、ほんの一握りだけ。
今は、スクールホリデーで人も多いから、もうしばらく待つことにしようかしら。

の日記を見ていて、面白そうなものがあったので、さっそく実行。その結果は、

強運で頑張り屋のあなたは成功するタイプ

〈あなたの開運顔度〉
★★★★
…かなりの開運顔…

ちなみに、似ているのは、
1位 唐沢寿明 85%
2位 小泉純一郎 80%
3位 桑野信義 77%
だそうだけれど、小泉以外は、誰だか知らなかったりする。

7月10日

日本から送ってもらったビデオを見る。「ムツゴロウ 動物王国」 その中の犬の飼育シーンを見ていて、呆れてしまった。腹が立った。
群れの中で弱い犬に対して噛みついた犬を飼育係の女性が叱っている。その光景があまりにも悲惨なので、目を覆いたくなった。叱られている犬が不敏でならなかった。その女性は、犬小屋を棒でバンバン叩きながら、ヒステリックに声を張り上げ、犬を詰る。それに対し、犬はひたすら脅えるだけ。してはいけないことをしてから怒るまでに時間が経っているので、犬は何故怒られているのか分かっていないのだ。それなのに、脅えた姿に向かってさらに追いつめるように、高い声でギャアギャア言いながら執拗に犬小屋を叩き続ける。まるで自分の溜まった鬱憤を全て犬に向かって吐きだしているようだ。

その後、BBCの「The Dog Listener」を見る。同名の本を書いた女性が、色々と問題のある犬のしつけに出張サービスをする番組。この人は、一言も声を張り上げない。それどころか、犬をまったく無視する。そして、飛びつく、舐めるなどのしてはいけないことをした犬は、即座に部屋、あるいは家から追い出してしまう。ただそれだけで、30分もしないうちに、犬を手なずけ、リーダーとして犬に認められてしまう。すごく感動的。さっそく、今朝から駄犬のしつけ直しのために、そのテクニックを試してみる。

  • 朝起きたとき、外出から帰ったときなど、最初の5分間は、犬をまったく無視する。つまり犬に媚びない。
  • してはいけないことをしたときは、部屋、家から追い出す。つまりグループから排除する。
犬の行動を犬の行動原理に基づいて理解し、犬の行動原理を的確に利用することによって、様々な問題を解決していく。だから、人はもちろん、犬にも無理がない。それに対し、「動物王国」には、その視点がまったく欠如していた。おかげで人はヒステリーになり、犬は脅えるばかり。前から、僕の畑正憲氏に対する評価は高いものではなかったけれど、これで、また一段と下がった。

7月13日

最近読んだ本。

河邑厚徳+グループ現代「エンデの遺言」 ミヒャエル・エンデ並びにシルビオ・ゲゼルが言うところの「利子の付かないお金」、「時間とともに減価するお金」、あるいは特定の地域だけで有効な地域通貨の理念を説明したもの。意気込みは分かるけれど、シルビオ・ゲゼルを崇め奉る宗教になってしまっているし、地域通貨が実際に使われた場合、税制、仕入れなどの点から小売店にとっては魅力どころか逆に損にしかならないのに、そこをどうクリアするかなど実際的な部分での提案がない。そのため説得力に欠けている。
野口悠紀雄「インターネット「超」活用法」 前半部分は、実際にインターネットを使っている人にとってはあまりにも当たり前すぎて、取り立てて言うほどのところはない。後半の資料部分は活用ができそう。黒木さん、どうもありがとうございます。
斉藤たま「野にあそぶ」 日本に古くから伝わり、そして消えつつある、あるいは消えてしまった遊びの数々を収集したもの。話のこねたとして仕えそうなものもあったりして、お勉強としても楽しみながら読めた。
佐々木一男「秘渓を巡る釣りの旅」 読んでいて、何度、投げ出そうと思ったことか。仕事の資料として我慢し、歯を食いしばって読み終えた。それにしてももうちょっとどうにかなりませんかね、この文章。
本所次郎「カード詐欺団」 短編集。ほぉ、なるほど。ふむふむ。中堅どころが経済関係を題材に手堅くまとめたと言うところ。取り立てて、言うところなし。
夢枕獏「新・魔獣狩り7」 この手の話は、できることなら第1巻から最終巻まで全て揃え、一息に読むのが正しい楽しみ方だろうと思う。しかし、それがなかなかできないんだな。つい読んでしまう。
チャールズ・コットン、霜田俊憲訳「釣魚大全2」 「このかたわらを流れる川で、三時間か四時間のうちに、30匹、35匹、40匹もの、この川の最上の鱒を釣りあげているのです。それが今では何という恥ずべきことか、何という無念か、これほどの川が卑劣きわまる人間どもの悪行によって台無しにされるとは。」 いずくも同じ、秋の夕暮れ。

7月17日

ようやく、雨が降った。トンガリロ川を始め、近郊の川が全て濁っている。この調子なら、明日の朝が狙い目だろう。女房が、イクラ、イクラとうるさいので、なんとしてもメスを釣ってこなければならない。まさに手から口の生活。

本棚が一杯になったので、2段付け足した。おかげで、これまで隙間に詰め込んでいた本が片づき、部屋がすっきりする。次は、机だ。残念ながら、高島邸のようにCADがあるわけではないので、方眼紙に鉛筆と定規で線を引いて設計をした。今月はなんだかんだやることがあるので、これは来月のプロジェクト。

拙著を読んでくださった方から、連絡をいただいたり、掲示板に感想を書き込んでいただいたりする。僕宛てに書いてくださるわけだから、当然といえば当然なのだけれど、「面白かった」と言っていただけて、とても嬉しい。
北海道の知り合いに、「本がでたよぉ」と連絡をしたら、その返事のメールに、僕が北海道にいたころ何度か釣りを一緒にしたことのあるフリーター、城君も本を出したということだった。北海道で釣りガイドなんてやって、食べていけるだろうか。それにしても、本の定価が高いのが羨ましい。その分、印税も多いもんなぁ。

7月18日

8時過ぎに起き、9時には川に立っているはずが、目が覚めたら9時45分。のろのろと朝飯を食べ、ツランギの街で請求書の支払いやら何やらしてから釣りに出かければ、水辺で竿を握った時には、もう12時を回っている。3時半までの間に、八尾の鱒をかけ、五尾には逃げられ、三尾を岸にあげる。五十三センチの雌を二尾と、六十四センチの雄を一尾。雌をどちらもキープしていたので、雄は流れに戻した。車まで三十分近くも鱒をぶら下げて歩かなければならないことを考えると、イクラの入っていない雄は重さの割に喜びが少ない。労多くして、功少なし。
逃げられた鱒のうち、二尾は明らかにスレだった。針先に鱗がついていたり、横向きになったまま瀬の中を流れに乗って下っていったり。だから、それほど悔しいとは思わない。また、残りの三尾のうち二尾はほんの一瞬鉤に乗っただけなので、あらま、というほどの気持ちしかないけれど、一尾、でっかい雄が、身体を半分水から出して頭を振った瞬間に鉤が外れたのは、今思い出しても残念である。

鱒を三枚に下ろし、塩をきつく振って水気を出し、それから酢でしめた。それを薄く削ぎ切りにし、漬物器に敷き詰め、酢飯を乗せてからぎゅっと押せば、押し寿司の出来上がり。米を三合炊いたのに、全部食ってしまった。

台所で鱒を三枚に下ろしていると、猫と犬が纏わりついて離れない。中落ちに付いた身をこそぎ落として分けてやる。きちんとお座りをした犬の頭上に鱒の身をぶら下げると、カプカプと音を立てて口を開け、食べようとする。そのまま鱒の身を犬の後ろ側に動かしたら、犬はカプカプ言いながら鱒を追い、とうとう後ろにひっくり返ってしまった。あまりのことに女房と大笑いをする。駄犬、健在なり。

7月22日

「釣り師の言い訳」第38回目の原稿を書き始める。いつもよりは、少し、真面目な話。

金曜日に高島さん夫妻が遊びに来られ、例のごとくワインの夕べ。白をたくさん飲む。なかなか美味なり。そしていつものごとく、ヘベノレケ。
土曜日は根岸さん、日曜日に黒木さんがそれぞれ釣りの帰りに家に寄っていかれる。二人ともトンガリロで釣りをしたが残念ながら駄目だったようだ。話を聞けば、とにかくたくさんの人で、駐車場に車を停められなかったくらい。それだけ多くの人が入るので、中にはポイントがどこだか良く分かっておらず、魚の一番濃い場所をバシャバシャと歩いて川を渡る人もいるらしい。隣りの芝生は青いじゃないけれど、どうしても遠くのポイントがすぐ足元のポイントよりおいしそうに見えてしまう。それでつい、深いところまで立ち込んだり、渡らんでも良いところで対岸に行ってみたり。結局は自分で魚を蹴散らかし、釣れなくしている。なんでもそうだけれど、できる、ということと、したほうがよい、ということは全く別の問題だ。腰まで立ち込めるからといって、腰まで水に浸かったほうが釣れるとは限らない。逆になるべく離れるようにした方がいい。この辺のところは、こないだ読んだチャールズ・コットンの「釣魚大全」(1676年)にもわざわざ書いてあったくらいだから、洋の東西、時代を越えて同じ過ちを犯し続けているわけだ。

7月24日

「釣り師の言い訳」を、ひいひい言いながら書く。資料として、ニジマスの産卵期を調べていて、ぶっとぶ。「ニジマス」「産卵期」で検索して出てきた結果で、一番最初のやつをクリックして驚いた。どうして、これが出てくるの?

今回のは、自分でも書きながら、色々と勉強になる。うーむ、遺伝子操作がここまで一般化しているとは思わなかった。山女魚の三倍体、ニジマスの三倍体、偽雄、全雌なんて当たり前のことなのね。

7月27日

相変わらず、天気が良い。雨が降らない。川も濁らない。だから、鱒ものぼらない。まぁ、この2、3日は仕事が詰まっていたので、変な誘惑もないぶんよいか。
仕事が詰まっていると言っているわりには、翻訳だの原稿だのをやっつけつつ、ソフトシンセサイザーなんかダウンロードしてしまったりする。シンセそのものは、大した容量じゃなかったからいいけれど、音源が10メガもあったので、ダウンロードにしばらく時間がかかる。
MIDIをシンセで再生することはできるようになったものの、ブラウザのプラグインで聞くために必要なファイル、設定が分からない。しばらくあちこちいじくり回してみよう。
ちなみにピアノの音は、かなりよいけれど、チェロがどうにもならない。チェロのもっとましな音源ファイル(cello.pat)をどこかで見つけてこなければ。それとrvrbbd.patって、なんの音なんだろう。リバーブ・バスドラム?リバー・ベッド&ブレックファースト・だよ?

7月29日

アウトドアの原稿を書く。まとまりが付かず、四苦八苦する。苦しみながら、つい、逃げたくなって、実際に逃げてしまう。逃げ先は、もちろん、ネット。で、こんなものがありました。もちろん私は、「きれい」に投票いたしました。俺のに比べりゃ、全然ましじゃん。