トラウトバム日本語版        

DIARY

1月3日

大みそかも元旦も、とりあえず仕事をした。昨日は誕生日ということもあり、さすがにお休みにして昼から湖に釣りに行く。ボートを家から引っ張っていく前に、このところずっと使っていなかったので、念のためにとエンジンをかけてみたら、案の定、バッテリーが上がっていた。それで、車のバッテリーにつないでしばし充電する。勢い良く湖に乗りだし、しばらく走ってさらに充電して、河口にアンカーで止めて釣り開始。ぽんぽんとすぐに釣れたけれど、どちらも痩せてあんまり美味しそうじゃない。そのまましばらく粘ったものの当たりすらなくなったので、場所を変えようとしたら、エンジンがかからない。バッテリーが上がっているじゃないか。
うむ。
仕方なく、予備の小型エンジンをかけ、そろそろと帰途につく。小型エンジンの方は、本当はガソリンと2サイクル用オイルの混合を使わなければならないのだが、緊急のため、ガソリンのみで走る。と、半分くらい戻ったところで急にエンストしてしまった。どうやら、焼き付いてしまったらしい。
うむ。
とりあえず、アンカーを下ろし、他の船が通るのを待つ。ハーリングをやっている船に手を振り、そばまで来てもらい、バッテリーコードをつないで、無事メインのエンジンをかけて寄港した。ボートをあげようと、ふと見ると、岸から届きそうなところで、バチャリボチャリと水しぶきが上がっている。鱒がスメルトを食べているのだ。それで、陸から竿を振ったら、見事、美味しそうな丸々とした鱒が釣れた。おかげでどうにか誕生日の夕食に、鱒の刺し身を食うことができた。鱒の刺し身は、これまでショウガ醤油だったのだが、それにみじん切りのネギを入れるとさらに美味しいことを発見。ボートを直して、釣りに行かねば。
夕マズメは、国道の橋のすぐ上のポイントに入る。根岸さんがここでいい思いをしたというので、柳の下のドジョウ狙い。しかし、この間の増水で鱒が皆落ちてしまったのか、どれも木っ端鱒で、しかも数が少ない。女房が1尾釣り、僕はかけバレで終わる。

1月7日

3日の日記を読んだ方から、僕がニジマスを刺し身で食べたことについて、「NZのニジマスに寄生虫はいないのか」というメールをいただいた。それで、気になっていろいろと調べてみたら、日本の場合、降海型のサケマス(特にサクラマス)では、サナダムシがいるらしい。もっともこれは、特定海域のケンミジンコから移るので、淡水産のヤマメにはいないのだが、ヤマメはヤマメで顎口虫横川吸虫がいる可能性があるらしい。
ふむ。しかし、よくよく見れば、横川吸虫はほとんど無症状だというし、顎口虫も幼虫が皮膚の下を歩く程度とのことで、あんまり悪さはしないようだ(すっげぇ気持ち悪いだろうけれど)。
では、ニュージーランドのニジマスには寄生虫がいないのかと言われれば、良く分からないが、もう17年もこの地に住んで、美味い旨いと食い続け、特に皮膚の下をもぞもぞ歩く虫もいないし、腹痛、下痢などもないので、とりあえず「気をつけて」食べていれば大丈夫なのではないかと思う。
さらに言えば、たとえNZのニジマスに寄生虫がいて、もう既に僕の体の中に巣くっているとしても、17年も連れ添った仲になるわけだし、特にこれといって苦労させられたことも泣かされたこともないのだから、そんなに悪い奴ではないという気がする。寄生虫が一掃されてしまったから、アトピーなど免疫系の病気が多くなったという話もあるくらいだし。と、まるで旧友をかばうように寄生虫の肩を持ってみたりして。

ボートの小型エンジンは、やっぱりお釈迦になっていたので、結構な散財。とほほ。

1月10日

ようやく仕事も山場を越え、ほとんど先が見えたので、お休みしてカヤックに行く。日本から毎年大挙してくるWiz Natureというスクールの方々。当然、めちゃくちゃお上手。ウェリントンから高島さんも参加して、総勢10人でちょっと増水気味のモハカ川を下った。石の間に挟まりそうになって、パニクって沈脱した以外は、順調に沈することもなく、全ラピッドをクリアできた。久しぶりのカヤックで、おまけに4級で、さらに雨が降って増水しているようなので、前夜はびびって、あまり眠れなかった。アメリカに行って、アイダホの川(5級)を下ろうとしたときのことを思い出した(その際も川の轟が聞こえるところに車を止め、寝ようと努めたのだけれど、緊張のあまりほとんど眠れなかったのだ)。
カヤックが無事終わり、上流に置いた車を取りに行った帰り道の林道で、カーブを曲がったら、真正面に車。慌ててハンドルを切りつつ、ブレーキを踏んだけれど、間に合わずぐしゃりといってしまった。相手の車は、タイヤがハの字に開いてしまい、こちらは、右前のヘッドライトがグチャリと潰れ、パネルが飛び、ボンネットがねじれてエンジンルームが見え、ドアが開かない。おまけにタイヤは潰れている。携帯の届くような場所ではなかったので、お互いに後続の車(私はカヤック仲間、相手は両親)がいたおかげで、なんとか帰ってこられたけれど、そうでなければ、今ごろまだ林道を歩いているかも。
いずれにしても、車は買い替えるよりなさそうだ。走行距離40万キロにして、無残に地に潰えてしまったわけだ。月までは行けたものの、帰れなかったわけですね、という高島さんの言葉に乗るなら、「アポロ13号もどき」というところか。
これからしばらくは、保険屋に連絡をしたり、クレームを出したりと、雑用に追われそう。そのかたがついたら、オークランドに行って、車を物色するとしよう。
ま、いずれにしても、乗っていた人間、犬を含め、誰も怪我をしなかったのが、不幸中の幸い。

しかし、先週はボートのエンジンを焼き、今週は車を潰しと、よっぽど動力系についていない年明けだ。後残っている動力系といえば、芝刈り機くらいしかないはずだが、、、。気をつけようっと。

1月18日

久しぶりにぽっかり時間が空いたので、どれ釣りにでも行くかと、昼過ぎにトンガリロ川へ出かける。トンガリロ川沿いの歩道は、川を見下ろしながら森の中を抜ける道で、散歩するのにもとても気持ち良いところなので、天気の良い土曜の午後ということもあいまって、何人にもすれ違う。駐車場から20分ほど歩いてようやくポイントに着き、いざ釣りをしようと振り返ると、木陰でアベックが抱きあっているじゃありませんか。いえ、すんませんです。ああ、これこれ、タロー。そっちに行くんじゃない。あはは、それじゃ、ごゆっくり。あたふた逃げるようにして、もうひとつ上流のポイントに入る。強い日差しの下、どこかで蝉が鳴いている。こんな真っ昼間なら、でかいフライをぷかぷか浮かべて、食い気のありそうなやつを狙うしかないだろうなと、フライを出そうとしたら、フライボックスを間違えて持ってきたことに気づいた。あるのは14番だの16番だの、小さくていじましくも華奢なフライばかり。ありゃま、これじゃ何にもできないじゃないの。仕方なく、小さな鱒をロリコンもどきにいじめようとしたのだが、ピシャリともパシャリとも出ない。やっぱり幼児虐待はいけないことなのねと早々に諦めて帰った。帰り際、吊り橋の下流のポイントを上から覗いてみれば、5、6尾の鱒がじっとしている。なるほど、こいつらが夕マズメにモコモコと出ていたに違いない。またの機会に、狙うことにする。

次の仕事の企画を考えていて、NZのビールのテイスティングをしないといけないなと思った。手に入るNZのビールをずらずらと並べ、ちょっとずつ飲んでは味見をするのだ。もちろん一人では飲める量など限られているので、数人集めなければならない。ということで、まだ、日時などまったくの未定ではあるけれど、希望者、募ります。

1月25日

車 保険屋から依然連絡なし。
ボート 修理屋から依然連絡なし
仕事の企画 編集から依然連絡なし
フローリング 材木屋から依然連絡なし

足も船もないので、釣りにもカヤックにも行けない。大きな仕事だから少しずつ片づけなければならないのに、ゴーサインが出ないので、これも取り掛かれず。家のフローリングを入れている最中なのだが、ちょっとした手違いからフローリング材の追加注文をする羽目となり、これがまだ届かない。おかげで仕事部屋、寝室にあった物をすべてリビングに移動したまま戻すこともできず、うずたかくありとあらゆるものが積み上げられた四畳半ライフを満喫することとなった。フロアサンダー、塗料まで考えると、あと二週間はこの生活をエンジョイしなければならないようだ。

家でごろごろ寝転がって、本でも読むとしよう。

1月31日

やっと、どうにか床材が入った。あとは、フロアサンダーと塗料だけだ。しかし、この「だけ」というのが、安心できないんだよな。床材だって、全てが順調に行っていれば本当なら先週で終っているはずなんだから。もう十六、七年この国に住んでいて、まだ、この辺が分かっていないと自分で思う。これまで何度車を修理に出して、一日といわれながらそれが二日、三日と伸びたことか。届いた部品が違う、部品はあっていたが足りない部品がある、等々。それを思うと、「あとは、フロアサンダーと塗料だけだ」なんて安心しているようでは、まだまだニュージーランド人になり切っていない。

仕事の引き合いが二件あったが、一件はどうにも時間のやりくりがつかず、涙を飲んでお断り。でかい仕事だったので、金額的にもそれなりで、できればお引き受けしたかった。しかし、できないものをできると言って引き受けて、後でとんでもないことになってしまったら、それこそその会社とのお付き合い自体がパーになってしまうので、これはやむを得まい。もう一件は、やはり時間のやりくりがつかないので、半分の量ならやれるかもと言ったら、ほぼ三分の一の量の仕事が回ってきた。駄々はこねてみるもんだ。ありがたや、ありがたや。ただし、こっちの会社は単価がお断りした会社の七割でしかないのが玉に瑕。

車 保険屋から依然連絡なし
ボート 修理屋からできたと言われたものの、値段が恐くて取りに行けず
仕事の企画 編集から連絡はあったものの、要再考とのことで、また考えねば
フローリング フロアサンダーから依然連絡なし