トラウトバム日本語版        

DIARY

2月4日

朝からしっかり働く。明日も働く。多分この2週間が山というところか。

先日読んだチョムスキーの「Power and terror」は、力のある国とテロについて述べたインタビューおよび講演集であった。力のある国とテロというと、ブッシュが言うところのアメリカ対テロリストの戦いをまず思い浮かべるが、この本ではテロを終焉させるために大切なのは大国自体がテロを辞めることなのだ、と主張している。そしてその主張の裏付けとして、南米ニカラグア、(イスラエルを使用した)パレスチナ、アフガニスタン、ボズニア、そして今回のイラクと事実を並べ、いかにアメリカが国際世論を無視し、国連をないがしろにしてこれらの国でテロを行ってきたかを説明している。
これはもちろんアメリカだけの話ではなく、イギリス、ドイツ、ソビエト、フランス、日本と力のある国が力をバックに自国のエゴを通すためにこれまでずっと、そして世界中で行われてきたことでもある。

ふむ。

インターネットは、どこという中心があるわけではなく、網の目のようにあるいは地下茎が無秩序に蔓延るように延びたネットワークである。だからそこには権力による検閲のない個人の自由な世界が広がっている、との幻想をうっかり抱きやすい。確かに物理的なネットワークには中心はないが、しかしその上を流れる情報にはどうしても集中点が生じる。それは検索エンジンである。もし誰かが世の中の人に知られたくない情報があり、そのため検索エンジンに圧力をかけ、その情報がヒットしないようにしたらどうなるのか。そうなった場合、たとえ情報がネット上に存在したとしても、誰にも知られることなく眠り続けることになる。
そぉんな馬鹿なことが、と思っていると足下をすくわれる。

google村八分。そしてその詳細
また、同じ企業による はてなダイアリへの圧力

この二つ、つまりアメリカなどの大国によるテロと企業による検索エンジンやISPへの圧力は、つまるところどちらも持てるものによるごり押しである。持てる者は武器や財力だけでなく、法律上の知識といった力をも動員して自分のやりたい放題にやろうとする。
これに対し、僕のできることは微々たるものでしかない。しかし何もしなければ何も始まらないので、とにかく「僕はそういうことは好きじゃないです」という意思表示だけはすることにした。

悪徳商法?マニアックス
http://www6.big.or.jp/~beyond/akutoku/

 

 

2月8日

さぁ今週もめちゃ忙しいぞぉと構えていたら肩透かしをくらってしまった。
日本のさる製薬会社が情報収集会社に依頼して、作っている薬品に関する文献を世界中の学術雑誌から集め、それを翻訳会社に配送、でもってそこから私らのような翻訳者に仕事が回ってくるという流れでずっと動いていたのだが、今週の分を翻訳会社が流そうとした直前に大元の製薬会社から待ったがかかってしまったらしい。
ううむ。これが単に今週はちょっとお休みとか今月はお休みくらいならよいのだが、プロジェクト全体の消滅となるとかなりの痛手である。ほとんどこの仕事一本でどうにか食べられるほどの量があったのだから。もし消滅となるとリストラにあった社員よろしくゼロからの出発とあいなる。あちこち走り回って仕事をもらってこないといけない。
とほほほほ。

と嘆いてばかりいても仕方がないので、とりあえずは遊ぶことにする。
まずは、マヒナランギ・トッカーのコンサートを見に行った。タウポで開かれているアートフェスティバルのために作られた特設会場で行われたのだが、大きさと言い一角にバーがあるところと言いライブハウスのような雰囲気。ショナ・レーンもバックに参加してなかなか楽しめるコンサートだった。いかにも内輪でやってますという、よく言えばアットホームな、悪く言えば手際のまずさが目立ったけれど、それを補ってあまりある面白さがあったので許してやろう。

で火曜日まで仕事をしたら、あとは釣りだぁ。
トンガ、フィジー、クック諸島と一緒に釣り歩いた友達がオーストラリアから遊びに来たので、今週はセミフライを手に携えてどこかに行くとしよう。

ちょっと喉が痛くて風邪の引きかけみたいなので、免疫力が高くなると密かな話題のラム酒を飲んで、なんとかねじ込んで抑えつけなければ。それだけでは不安だから、風邪のウイルスに効き目があるという噂の赤ワインも飲んだほうが良いだろうな。さらにこの二つの効果を高めると科学的に証明されているビールも当然、、、。

 

 

2月9日

昨日の朝から女房は仕事に出かけていていない。それで飯は自分で作らなければならない。冷凍庫をごそごそと探ってみると、根岸さんにいただいた鯛とシマアジを三枚に下ろした残り、つまり中落ちと頭が出てきた。さらに奥深く手を突っ込むと鳥ガラが1羽分。他にもいろいろあったのだが、とりあえずこの二つを使って何かを作ることにする。
オリーブオイルでニンニクと玉葱をよく炒め、きつね色になったところでニンジンを入れる。白ワインをたっぷり注いで汁気が無くなるまでさらに炒め、鳥ガラでとったスープをガラも一緒にたぷたぷと入れる。塩、胡椒で適当に味をつけ、しばらくぐつぐつと煮たら、いよいよ中落ちと頭の登場。タイもシマアジも一緒くたに入れて火が通ったかなというあたりで畑でとれたインゲンのざく切りを放り込んでお終い。
どれ、どんなもんができたか。味見をしてみる。
う、うまい。すっげぇうまいっす。早速スープ皿によそり、ガラだの中落ちだのを手づかみして骨にこびりついた肉を歯でこそげとりながら食べる。
作っているときは、「スペインの片田舎で細々と暮らす貧乏な漁師風スープ」というタイトルが頭に浮かんだのだが、これがどうして。僕の食に対する嗜好性のツボを気持ち良く押してくれるものとなった。そう、こうやって手でつかみ、骨から身をはがして食べるというのは原始的ではあるけれど、それがために余計に食い物を食っているという実感を味わえるからかなり好きなのだ。
久方ぶりに満足できる料理と巡り合えた気がする。

さて、明日は何を食うか。

 

 

2月11日

昼前に友達が来て、ちょっとおしゃべりをしてから釣りに出かける。
まずは発電所の放水口。様子を見ているとときおり波紋が広がっているので、これはこれはと舌なめずりしながらしばらく粘るもあたりもかすりもなし。よく注意して見ていると、波紋はマスのライズではなく水面に呼吸をしに来たナマズらしい。「ニンフでやったら釣れるかなぁ」と言いながら、結局は試さず場所を変えることにした。
ボートを出して、トンガリロ川を河口から遡る。僕のボートではなく友達の12フィートのアルミ船。このサイズのボートに乗って釣りをするのは随分と久しぶりだった。これでもいいんだよなぁ、別に人を乗せてガイドするわけじゃないんだから。川はちょっと濁り目で、おまけに目の位置が低いので魚を見つけづらい。大分遡ったところでモーターを切り、ドリフトする。小舟なのでオールで操れるところがいい。
しかし、魚の反応はまったくない。セミは結構鳴いているというのにライズ一つないし、しかもいつもなら40クラスのニジマスがちょぼちょぼと飽きない程度に出てくれるのにそれすらない。そればかりか浅場で寝ているはずの巨大寝てマスの姿もないではないか。どうやら、先日の大水で皆湖に降りてしまってまだ川に戻ってきていないのかも知れない。
そんなわけで、半日釣りをしてあたりもかすりもしないまったくのボウズ。

ま、こんな日もあるわな。

 

 

2月17日

こんなに働いてどうするんだってくらい最近良く働いている。これはご褒美に是が非ともクック諸島辺りに行ってボーンフィッシュをやらないといけない。ということで、前回のクック諸島ボーンフィッシュ惨敗3人組みが集まってわいわい酒を飲みながら次回の作戦を練った。行く場所はアイツタキ雪辱戦とペンリン探査というハシゴになりそうな気配。時期は10月。一度行っているから様子はほぼわかっている。持っていくべきフライもすぐに巻けるし、前回の問題点もなんとか解決しているはず。唯一気になるのは、私の仕事がそれまで順調に流れているかどうかだ。今は忙しいけれど一寸先は闇だからねぇ。

今日の畑からの収穫。
ジャガイモ、サヤインゲン、イタリアントマト、キュウリ、赤タマネギ、ナス、ピーマン。

 

 

2月22日

ついこの間も同じようなことを言った気がするが、この1週間が山だ。きっと。これを乗り越えれば比較的楽になるはず。

支払いを溜めに溜めた某翻訳会社から1月半ばに来たメールでは、1月31日に一部支払いを予定してますということだったので、ずっと良い子にして待っていた。毎日郵便屋さんが配達に来るたびにわくわくしながらポストをのぞき、小切手の入った封筒がそこにあるのを期待していた。でも待てど暮せど来ない。いくら郵便事情が悪いとはいえ、あまりにも遅すぎるので不安になって「どうなってるんでしょう」とメールを書いたら、こんな返事が、、、。
「弊社では、現在お客様への売掛金がなかなか集まらず苦しいときを迎えております。そのため支払いが滞っております。でも君があんまり良い子にしてるから、一生懸命頑張ってちょびっとだけ払ってあげるね(原文英語)」
大丈夫なのか、この会社?
大丈夫なのか、私の人生?

 

 

2月25日

うっしゃぁ、山は越えた!というわけで、平常通りの週休二日に戻れそうな気配。早速、明日明後日はお休みすることにした。明日はロトルアに買いだし、ボート屋回り、温泉などの周遊ツアーに行くことが決まっている。明後日は、釣りにするか、カヤックにするか、それとも二股かけるか思案中。

さて、ボーンフィッシュ。
ペンリンへの飛行機は、ラロトンガから出ている。それがアイツタキに途中止まっていくので、これはどっちもやれってことでしょう、と盛り上がったのである。友人Tが早速詳細を確かめるべく飛行機会社に連絡をとった。
友人T「ラロからアイツタキに行って、そのまま降りずにペンリンまで飛んで、で帰りはアイツタキで数日過ごすというのもできるわけ?」
エアラロのお姉さん「はい」
友人T「いいねえ、いいねぇ。確かペンリン行きの飛行機は毎週土曜日だよね」
お姉さん「いえ、、、」
友人T「あれ、じゃ、スケジュール変更になったんだ。いつ飛ぶの?」
お姉さん「座席が埋まり次第、飛んでおります」
友人T「ええ!?決まったスケジュールはないの?」
お姉さん「はい」
友人T「ペンリンに飛んじまって、いつ来るか分からない帰りの飛行機を待ち続けるなんてこともあるの?」
お姉さん「、、、、、、、、、」

あぶない、あぶない。
もうちょっとで、南太平洋の小島に骨を埋めるところであった。

 

 

2月29日

夕べから今朝にかけ、とんでもなく激しい雨が降った。川はすごいことになっているだろうなと思いつつ、今日の午後ツランギまで出かけたら、家からトンガリロ川までの間で8箇所が水没。トンガリロ川もちょっと前までは土手の上まで水が来ていたらしく、普段は草原のところが砂やら泥やらで覆われている。橋げたにかかった流木を取り除く作業で橋は通行止めになっていたので、ツランギまでたどり着けずに家に帰る。
夕方のテレビニュースを見ていたら、ツランギではトンガリロ川が氾濫する恐れがあったため200人ほどが避難したと伝えていた。うむ、そこまで凄まじい大水であったのか。
釣りガイドをやってなくて、本当によかった。

せこせこと部屋にこもって仕事。