トラウトバム日本語版        

DIARY

2月2日

「Unmentionable Cuisine(口にできない料理たち)」の豚頭の項を読んで、これはダメだと思った。フランス料理では、皮をはぎ、中の肉を削いであれこれ二日もかけて調理し、それでまたその肉を皮の中に戻して豚の頭の形を再現し、耳を付け、牙をさし、最後に半分に切ったゆで卵にサクランボをさして目玉の変わりとする、というえらく手のこんだものであった。また、ノルウェー料理では、頭を半分にかち割って、流冷水に3日間浸したあと、茹でたり、皮を剥いだりとこれもえらく時間がかかる。アイルランドも然り。最後に紹介されていたアメリカ南部のシチューは、豚頭、牛肉、雌鳥をぶち込み、それに玉ねぎ、トマトなどを入れ、味付けにA1ソースを流し込み、アイダホポテトと一緒に煮込むだけという、いかにもおおらかなもの。しかし、あいにくと雌鳥も牛肉も肝心なA1ソースもない。それで仕方なく、とにかく煮込んでしまって味付けはそれから考えればいいやということにしたのだが、ここではたと困ってしまった。豚の頭が丸々一個入る鍋などというものが、そもそも我が家にはないのだ。そこで、ひたすらあちこちの肉をそぎ落とし、どうにか下あごだけはうまく外せたものの、後頭部から鼻先までは一個の頭蓋骨なので分解のしようがない。トンカチでたたき割ろうかとも思ったけれど、とりあえず鍋にひたひたに水を入れ煮てみることにした。いま、鍋の縁から突き出る口先をフタで押さえて、ぐらぐらとやっている最中。
頬や顎、そしてタンをとりながらつらつら考えた。魚でも一番おいしいのは、カマ、つまり頬の肉と言われている。それなら、豚も同様なのではないか。しかもそれがけっこうごっそりと取れてたったの4ドルとはなんとも安いではないか。その上、タンの嬉しいおまけ付き。これで豚頭で取ったストックを使って、シチューにすれば最高だぜ。よし、決まり。明日は豚のタンカマシチューだ。
ランラ、ランラ、ラン。おいしい御飯が食べられるぅ。

2月4日

美味かった、じつに美味かった。豚頭を煮ているときからそんな予感がしていた。豚頭がぐらぐら揺れている鍋に、匂い消しも兼ねて、玉ねぎ、ニンニク、セロリをいれ、しばらくしてから味見をする。おおお。なんだ、これは。すっごくコクがあって、深みがあって、まろやかで、でもねちっこくて。味見用の小皿に醤油を数滴垂らして、それにスープを注いで口にする。うはははは。幸せだ。心が跳ね上がり、踊りたくなるくらいに美味い。思いっきり豚骨スープしてるじゃないか。そのままラーメンに雪崩れ込みかねない勢いだったのを、ぐっと堪え、タンカマシチューに方向を変える。玉ねぎ、ニンジン、そして大量のキャベツを炒め、そこに細切れにして強火で炒めたタンカマを入れる。塩、胡椒、できれば八角があればよかったのだがなかったので五香粉で代用。そこにお待ちかね豚頭スープストックをなみなみと注ぐ。待つことしばし、小一時間。ドンブリによそってさっそく肉から味見をする。おお、驚くほど柔らかい豚のカマと、こりこりとした弾力のあるタンが素晴らしいリズムを作っているじゃないか。そしてそれを包み込むようなこってりスープ。至福だ。
スープストックがまだかなり残っているので、ラーメンを作ることにし、まずは麺を打った。一晩おいて明日の昼には豚骨ラーメンだ。

じたばたと暴れながら流れてくるセミを、大きな鱒がゴッポリと飲み込むところの写真が撮りたくて、トンガリロ川下流でカメラを抱えたまま、鱒の横で3時間粘った。しかし、セミが流れてきたのは、たった一度だけ。60センチほどのブラウンは、すっと泳ぎ寄ってバコリと食べたけれど、ちゃんと撮れているのかどうか心もとない。明日は雨という予想なので、天気が回復次第、また出かけるつもり。
ちなみに、フライにがっぽり出るところも撮りたかったのだけれど、一人でフライを投げ、着水と同時に竿をカメラに持ち替えるのは、けっこう大変。どうしてもフライにドラッグがかかってしまって、見切られてしまう。

2月10日

なんともお客さんの多い数日間であった。まず、木曜日にウイズ・ネイチャーの清水さん、君田さん、それにあと3人(すまん、名前忘れた)がきて泊まっていった。翌金曜日は7時に家を出て、モハカ川下流部まで車を走らせ、タウポから合流した3人(すまん、名前覚えてない。男だとはなっから覚える気が無いらしい)の計8人で川下り。久し振りに4級の瀬で遊んだ。それにしても、皆があまりに上手いので感心。気軽に静水カートホイールをやっている。君田さんの話だと、最近は初心者に対しロールができるようになったら、静水カートホイールを教えているんだそうだ。カートホイールなんてテクニックのある人だけのものというわずか数年前のことが、まるで大昔のようだ。いろいろコツを教えてもらい、一生懸命船を沈めようとしたのだが、最後までできなかった。うーむ。皆がパッコン、パッコン回っているのを横目で見ながら、新しい船を買おうかと真剣に悩んでしまった。まぁ、今はまったくお金がないから無理だけれど。
モハカ川まで行きは5時間近くかかったのを、帰りは吹っ飛ばして3時間ちょっとで帰宅。砂利道ではあまりに飛ばしすぎて、ブレーキが加熱して効かなくなり、ちとびびった。で、その夜にオークランドから根岸さん来宅。一緒に飲んで、土曜日はタウポ湖で釣り。昼過ぎに黒木さんも合流してトンガリロ川セミ釣り大会となったのだが、セミはもうピークを過ぎたようで、鳴き方もちょっとボリュームが下がった感じだし、水面に落ちていたものは一度も見なかった。そのせいか、ブラウンは釣れず、ニジマスの子供ばかりがぴょこぴょこと出てきただけ。残念。
そして、ついさっき、昨年山奥で苦楽を共にしたニョニョさんとホニャさんが顔を出してくださった。なんだか、やたらと忙しいような日程だけれど、いい釣りができることをお祈りしてます。

いろいろな人が家に寄ってくれ、本当に楽しい時間を過ごすことができた。来てくださって、ありがとうです。みんな気を使ってくれて、お土産まで持ってきてくれるばかりか、その上、僕と遊んでくれたり、お酒につきあってくれたり。いい友達をもって幸せです。
なんらかの形でその御返しができたらと思ってますです。

2月15日

数日前に短期間ながら集中的に雨が降ったおかげで、川に濁りが入った。一昨日は釣りにならないくらい。それで、トンガリロ川のジョギングポイントでサーフィンをして遊ぶ。

今日はもう大分水も引いたけれど、静水でのカートホイールに挑戦したくて、湖に行く。やはり水が温かいのはいいことだ。ドッタンバッタン四苦八苦しているうちに、なぜか、ロールが怪しくなってきた。げげ、なんで?それで、後半はひたすらロールの練習。静水カートホイールなど、夢のまた夢。

知り合いのホームページの翻訳をやったのだけれど、なぜかうまくいかず。問題は翻訳そのものではなく、やたらとタグの多い、ジフ画像をどっぷり使った細部まできめきめのデザインなので、どうしてもそのせいであちこち問題が出やすいのではないかと疑っているのだが。あれだけたくさんの隙間を一つ一つ画像で埋めてあるのだから、表示が遅いわけだ。ケーブル回線なら問題ないんでしょうけどね。少し、疲れる。

このところ、勉強をしている。なんとか、明日の生活を自分の理想に近づけるための努力である。実を結んでくれないと困る。生活がかかっているのだから。

セミの数はもうすっかり減ってしまった。ちなみに僕がはっきりと把握している大発生は95年、99年、2002年であったから、次は2006年ではないかと予想している。その理由は、95年大発生の子供が99年に出たのだとしたら、今年2002年に出るはずがない。4年後の2003年でなければならない。となると考えられるのは、今年出ているのは99年の子供ではなく95年の子供ではないかということ。つまり地中で七年間過ごして地上に出てきたのではないだろうか。もしそうなら99年の大発生の子供はまだ地中でモグモグチュウチュウやっているわけで、2006年に出てくるはずだ。待ち遠しいぜ。

2月20日

翻訳の仕事が入った。嬉しい。と思ったら、和文英訳。げげげ、どうする。でも、詳しく聞いたらキウィが添削をしてから提出することになっているというので、それならいいかと引き受けた。日本語の原文がファックスで送られてくる。
なんじゃ、こりゃぁ!
インチキ商品をネズミ講式に売ろうってやつじゃないですか。「波動製品」?「精神面に及ぼす波動数値」?ううううう。いくら金のためとはいえ、こんな詐欺まがいの片棒を担がなければならないとは、情けなくてならない。もうちょっと収入があるなら、こんな仕事は断っていたのになぁ。しかし、広告文を読みながら、こんなでたらめな言い草を信じて買わされてしまう輩もいるのだから、世の中、ほんといろんな人がいるものだと改めて感心。
この世界には魑魅魍魎がいるのですよ、やっぱり。

続き。
「最近問題になっている『遺伝子組み換え食品』が出す悪い波動を打ち消す、、、、」
えーと、遺伝子は、タンパク質レベルでの問題です。分子の、それも炭素、水素、酸素、それにリン酸などが結びついたかなり大きな分子の話です。波動は、分子を作っているそれぞれの原子をさらに細かく切り分け、そのまた先の話、つまりあくまでも素粒子などの量子力学の問題です。
ということで、全然、レベルが違うだろうがぁ!
なんか、小難しそうな単語を使えばどうでもいいと思ってないか?

2月25日

このところ、パソコンの調子が悪かったので、思い切ってハードディスクを初期化した。半日もあれば元に戻せるだろうと思ったら、あれこれバックアップを取るのを忘れていたソフトが出てきたり、フリーウェアだからダウンロードすればいいやと思っていたのがいつの間にか著作権が売られて有料になっていたりと、思わぬところで手間を取り、結局、夜中の3時前までやっても終わらなかった。やっと、今日の午前中にどうにかお仕事ができるように復元。
仕事再開第一号は、ラスベガスのホテルのパンフレット。トップレスのお姉ちゃんが刺激的に迫ってくれるらしい。より良い翻訳をするには、何が何でも実物に触れないとだめだと言い張ったが、あえなく却下。

セミはもう終わった。残念である。この週末にバックカントリーに入った知り合いから、80センチを越えるブラウンを釣りましたとのメールをいただいた。羨ましい。ああ、俺も釣りたいっす。